3連休の最終日、9月16日は菊花賞の〝くせ者〟トライアル「セントライト記念」が中山競馬場で行われる。
何が〝くせ者〟なのか。それは距離が2200メートルという、クラシックディスタンスとは一線を画す距離だから。
桜花賞は1600メートル、皐月賞は2000メートル、オークスと日本ダービーは芝2400メートルだが、これを競馬界では「根幹距離」と呼ぶ。つまり、この400メートル置きの距離のレースを制することで種牡馬や繁殖牝馬の価値が上がるのが日本競馬なのだ。
一方で、1400メートル、1800メートル、2200メートルというこちらの400メートル置きの芝レースは「非根幹距離」と呼ばれ、大げさに言えば日本競馬では重要視されていない。いわゆる王道の血統が苦戦することが頻繁に見られるのはそういった理由だ。
事実、グレードレースの距離が整備された現在でも、芝1400メートル、芝1800メートルのGⅠレースは存在しない。年末の有馬記念(芝2500メートル)だけを制した馬が種牡馬としてあまり重宝されない、成功しないなどの背景は、その〝距離〟にあるといっていい。
しかし、セントライト記念は毎年芝2200メートルで行われている。そして人気を背負うのはほぼ毎年、芝2400メートルの「日本ダービー」から休み明けで挑んできた実績馬たちだ。ここに馬券のヒントがあると、関東在住の馬券師ライターT氏はほくそ笑む。
「ここ2年だけを見ても、22年はダービー3着のアスクビクターモア、23年は皐月賞馬でダービー2着のソールオリエンスがそれぞれ断トツの人気で2着。一見、結果を出しているようですが、レースを見てください。断トツ人気とは思えない、やっとこさの2着ばかり。絶対能力だけで何とか馬券になっているだけ。そのくらい2200メートルという距離は異質ということです。皐月賞→ダービーを経て、そしてセントライト記念に出走する馬で馬券になるのは、圧倒的に能力が高いか、むしろ両レースで惨敗をした〝根幹距離〟が向かなかった馬。中途半端に好走した馬はほとんどが消えている」
今回、皐月賞→ダービーから出走してくるのは、1、2番人気を分け合いそうなコスモキュランダ(皐月2着・ダービー6着)とアーバンシック(皐月4着・ダービー11着)、そして3番人気になりそうなエコロヴァルツ(皐月7着・ダービー8着)の3頭だ。
しかし、T氏はこう断言する。
「ここ数年を見れば一目瞭然。ダービー組は人気順に来ます。つまり、能力順です。ならばエコロヴァルツのような中途半端な成績が一番いらない。コスモかアーバンかは人気の上の方を買ってください。おそらくエコロだから、もうそれだけでいい。しかし、3連単の1着にするなんて愚策ですよ」
確かにこの4年、馬券になった12頭中、ダービー組は5頭が絡んでいるが、すべて2、3着止まりだ。そこでT氏が推奨する馬券戦略はというと、
「非根幹距離に適性のある馬を1着にする。これだけで馬券が一気に絞れる。今回なら、ラジオNIKKEI賞(芝1800メートル)で惜しい3着だったヤマニンアドホックしかない。連休終盤に雨が降ろうが道悪は上手い。もう2頭挙げるなら、皐月賞からの直行なので多少の不安はあるが、ルカランフィーストは1800メートルの鬼。実績は2頭より少し落ちるけど、アスクカムオンモアは非根幹距離にピッタリでしょう。挙げた3頭すべて、父親がクラシック戦線で目立つ結果を出していないのがいい」
3連休最後のメインレース「セントライト記念」の馬券は固まっただろうか。ダービー組の人気馬はあくまで2着か3着までに、アタマはここでこそ1着で買えるクラシックとは無縁のわき役ホースでトドメの勝負というわけだ。
(宮村仁)