「第76回エミー賞」の授賞式が、現地時間9月15日(日本時間16日)に米ロサンゼルスで開催され、ドラマ「SHOGUN 将軍」が歴代最多となる18部門を受賞。プロデュースと主演を務めた真田広之は、日本人初となる主演男優賞(ドラマシリーズ部門)を受賞する快挙となった。
同ドラマは現在、ディズニーの動画配信サービス「ディズニープラス」などで配信されているが、米テレビ界で最高の栄誉とされるエミー賞を受賞したことで、有料会員数の増加に弾みをつけている。
そんな中、期待に胸を膨らませて「将軍」の配信サイトにアクセスした視聴者から「映像がキレイで引き込まれるが、なんか違う」と違和感を抱く人が続出しているという。なぜなのか。
ドラマは豊臣秀吉亡き後、関ヶ原の合戦前の家康と大阪方の駆け引きを描いたもので、そこにジョン・ブラックソーン(按針)を中心とした異文化との出会いによる葛藤が大きなテーマになっている。ところがエンターテインメント性に重きを置いたためか、史実とは異なる「トンデモ日本史」が繰り広げられているというのだ。映画ライターが語る。
「原作はジェームズ・クラヴェルが1975年に発表したベストセラー小説『将軍』で、1980年に三船敏郎と島田陽子主演で映画化され、日本でもテレビ放送されて大ヒットしました。ところが当時も船員のひとりが連行され、釜茹でにされるなど、荒唐無稽な描写が物議を醸しています。このシーンは本作でも見事に再現されていますね。真田演じる吉井虎永は徳川家康をモデルにしており、物語では実在の人物名は使われていません。このことからわかるように、あくまでもフィクションとして楽しむ作品なのですが、史実と異なる展開に賛否両論が出ています。家康にまつわるドラマはこれまで数多く制作されており、歴史好きだけでなく史実を知る人にとっては、違和感が先に立ってしまうのかもしれません」
とはいえ、真田は受賞に際して、
「日本の描写がおかしくなるのが嫌でした。所作から時代考証まで口出ししました」
と、正しい日本の姿を伝えたかった旨を明かしているのだが…。
エミー賞史上最多の18冠という快挙は、アメリカ人ウケに大成功した結果といえるが、本当の歴史を知る日本人にとっては、どこかモヤモヤが残るというのもまた事実だろう。
(ケン高田)