9月28日、巨人が広島に8-1と大勝し、4年ぶりのリーグ優勝を決めた。球団初の「アレンパ」を目指した阪神は140試合目にして夢が潰えてしまった。
翌29日に放送された「サンデーモーニング」(TBS系)に出演した野球解説者の能見篤史氏は、阪神の敗因について「クリーンアップ全員が2軍落ちを経験」したことを挙げ、「レギュラークラスがいないっていう、前半戦なかなか(チーム状態が)上がってこなかったっていう要因ですね」と解説した。
在阪スポーツ紙デスクが肩を落としながらこう嘆く。
「能見氏が言うとおり、クリーンナップの3人が序盤戦で調子が上がってこなかったことは大きい。佐藤輝明は5月15日から6月7日まで、大山悠輔は6月5日から21日まで、森下翔太は7月6日から19日までそれぞれ2軍落ち。まさに月替わり2軍落ちでした。その間に4番に座った試合があった近本光司までがバッティングを崩すという弊害が出てしまった」
また、クリーンナップの不調時にその穴を埋めるべき存在だった助っ人外国人、ノイジーとミエセスがまったく期待はずれだったことがやはり大きかったと言える。
しかし、原因は選手個人だけではない。阪神が昨年とガラッと変わってしまったことといえば「走塁」だ。盗塁数が昨年リーグトップの79盗塁から、今年は9月29日現在(141試合)で39個と半分だ。この変わりようは責められるべきポイントだろう。
また、守備面では相変わらず失策が多い。昨年は85失策のリーグワースト、今年は現状84個とDeNAに次いでワースト2位だ(29日現在)。特に、守備が2軍落ちの理由となった佐藤は23失策でリーグワースト。昨年の20個より増えているのだ。
「投手陣は昨年MVPの村上頌樹が成績を落としたが、代わりに才木浩人が13勝。全体としては先発陣とリリーフ陣は昨年同様頑張っているのが、走塁面や失策数など細かい数字を見れば、アレンパできなくて当然だったと言える」(前出・スポーツ紙デスク)
その今年の阪神の戦いで、もう1つ気になったのは「捕手2人制」についてだと、スポーツ紙デスクが続ける。
「開幕時、梅野隆太郎と坂本誠志郎に加えて長坂拳弥を1軍ベンチに置く捕手3人制だったが、5月9日に長坂が2軍落ちすると、代わりに1軍昇格する捕手はおらず、以降は2人制となりました。7月12日に藤田健斗を上げて3人制に戻したものの、藤田は1週間後の19日に抹消。26日に長坂が再昇格して3人制に戻したが、これも9月3日に抹消。以後はずっと2人制でした。つまり、シーズンの半分は2人制だったことになります」
その捕手2人制の弊害は、9月27日の広島戦(マツダスタジアム)で如実に表れた。
巨人のマジック3で迎えた、絶対に負けられないこの日の戦い。阪神は同点の9回表、ヒットとエラーで無死一、三塁と勝ち越しのチャンスを作ると、7番坂本の場面で代打・糸原健斗を起用した。浅い外野フライでランナーを返せなかったが、木浪が四球で一死満塁とすると、ここで代打に送られた梅野が期待に応えられず三振。続く近本も三振で絶好のチャンスを潰してしまったのだ。
この場面、ファンからは代打の切り札である原口文仁を使わない采配に怒号が鳴った。だが、これが捕手2人制の弊害だった。
「坂本に代打を使うと守りで梅野を使わざるを得ないが、そうするとベンチに残っている捕手がいなくなる。原口は捕手をやっていた経験があり、万が一、梅野がケガをしたときのために残しておかなければならず、代打では使えなくなってしまった」(前出・スポーツ紙デスク)
試合は延長12回でサヨナラ負け。結局この日、原口は打席に立てないままだった…。
9月29日のDeNA戦に勝利してシーズン2位を確定させた阪神だが、甲子園球場で迎えるクライマックスシリーズのファーストステージでは、絶対に負けない戦いをするために、第3の捕手の意義を考え直すべきだろう。
(石見剣)