早期解散に慎重だった自民党・石破茂新総裁の豹変ぶりがすごいが、民放テレビででおなじみの政治ジャーナリスト・田﨑史郎氏の変わり身もまた、目を見張るものがある。
田﨑氏は総裁選で小泉進次郎氏推しだったのは明白で、対照的に高市早苗氏には冷たかった。ところが総裁選後は一転して高市氏の幹事長起用を進言するなど、高市陣営の肩を持つような発言が目立つのだ。
振り返れば田﨑氏は高市氏の出馬会見について、「ひるおび!」(TBS系)で「40点」を付けた。
「いろいろ政策を訴えているが、目標年次がない。単に羅列」
と、その理由を説明している。元民主党事務局長の政治アナリスト・伊藤惇夫氏の「45点」より低く、田﨑氏は「ひるおび史上、初めて伊藤さんより点数が低い」とまで酷評していた。ちなみに田﨑氏は、小泉氏の出馬会見には「70点」の評価を与え、司会の恵俊彰から「ホメすぎですよ」というツッコミが入るほどだった。
田﨑氏はかつて、自民党の梶山静六氏に食い込んでおり、梶山氏を慕っていた菅義偉氏に近い。その縁もあり、菅氏が後ろ盾になっている小泉氏に入れ込んでいた。高市氏は「タカ派すぎる」として、首相としてはふさわしくないとみていた。
それが高市氏が1回目の投票で1位となり、決選投票で惜敗。小泉氏ではなく石破茂総裁が誕生すると、高市氏の幹事長起用を主張し、高市氏の側に立つ発言が相次いだ。
さらに9月30日の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)では、閣僚人事について次のように解説した。
「高市氏の陣営が最も怒っているのが、村上誠一郎さん。村上さんは安倍(晋三)さんを『国賊』と呼んで、党紀委員会が1年の役職停止の処分を下した。その人をなぜ総務大臣にするのかと怒っている」
自民党関係者がその背景を分析する。
「田﨑氏は実は石破氏との関係は良好ではない。そのため、本来は評価していない高市氏に好意的なコメントをしているのではないか」
さらに今回の人事で菅氏が副総裁、小泉氏が選対委員長となったため、田﨑氏の発信は石破官邸よりも党側に寄ったものとなりそうだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)