「気の抜けたプレーではないと思うけど、やっぱり2、3年目の選手ではない。大いに反省してもらいたい」
9月29日の中日戦で、広島・野間峻祥が相手バッテリーのピックオフプレーに引っかかり、なんと2度も牽制死。あまりにもお粗末なボーンヘッドに新井貴浩監督は猛省を促したが、きつい言葉で責めなかったのは「一生懸命やっている選手に文句を言う必要はない」というスタンスを貫いているからだろう。
チームは9月に入り、優勝を目前にしながら、あれよあれよという間に4位に転落。ファンから「もっと厳しく指導しろ!」という声が上がるのは当然だろう。そんなファンの気持を察したのか、広島の元監督・緒方孝市氏が野間に特大の「喝!」を入れたのだ。
この試合で解説を務めていた緒方氏は、野間の牽制死を目の当たりにして「野間はベンチに残るな。今すぐに宮崎(フェニックス・リーグ)に行け!」と激怒。さらに放送中にもかかわらず「野間を2軍に落とすかどうか」というアンケートまで取ろうとしたのだ。
さらに7回、広島が勝ち越した後の野間の打席では「ここでホームラン打てたら、宮崎じゃなくて宮島に島流しで許してやる」。その後もことあるごとに「野間、野間」を連発し、最後まで厳しい言葉を投げかけた。
緒方氏が野間にここまで厳しい態度を取るのには、それなりの理由がある。野間は緒方氏が監督の時、2014年のドラフト1位で入団。緒方監督がプロで初めて背負った背番号37を「この番号を育てたい」として、松山竜平から剥奪してまで与えるほど。野間も期待に応えるかのように「緒方監督のような選手になりたい」と相思相愛だった。
そんな経緯があり、野間は入団直後から代走や守備固めがメインながら、1軍で124試合に出場。時には1番打者でスタメン起用されるなど、緒方監督の寵愛を受け、ファンの間では「隙あらば野間」という言葉が定着するほどに。
もはやここまでくると、どれだけ野間のことが好きなのかと思うのだが、それだけ緒方氏が野間に期待を寄せていたということだ。
今季は新井監督の「叱らない指導」が話題になったが、不甲斐ない野間のプレーは、本来であれば「懲罰交代」になってもおかしくはない。緒方氏のブチ切れ叱責に、多くの広島ファンは溜飲を下げたことだろう。
(ケン高田)