もう1人のキーマン、黒田も練習前なのにとにかく走る。投手陣に「投手はやはり下半身だから、走らないとダメだ」と説き、その影響を受け投手陣もまた走る、走る。「黒田イズム」の浸透だ。
迫氏が言うように、その黒田が投げた試合で新井はよく打ち、そしてよく守る。
「6月18日、私が出演したテレビ番組で、新井のインタビューが放送されました。いわく、『前の打席で(その打者が)こうだったから、今度はこういう打球が飛んでくる、と予測する。計算してやっています』。黒田については、その球筋も含め、新井は何から何まで知っている。だからそのつど、守備位置も変わる。黒田が投げる時の新井の守備は神がかり的ですらあり、(12球団一の二塁手と言われる)菊池涼介(26)よりもうまいと思います。事実、ある試合の解説で、OBの達川光男氏が『昔はいちばん守備のヘタな選手だったけど、今はいちばんうまい。彼が最も上達したのは打撃ではなく守備です』と話していた。そうした黒田と新井の関係が、カープを強くしています」(前出・迫氏)
今年は新井が4月26日のヤクルト戦で2000安打を達成し、黒田も日米通算200勝まであと2勝とカウントダウンが始まった。
〈そもそも同じチームで2000安打達成の打者と、200勝達成の投手が同じシーズンに生まれるのは、巨人(二度)以外に例がない。その巨人では、1980年に柴田勲と堀内恒夫、2004年に清原和博と工藤公康がコンビで達成している〉(「主砲論」より)
迫氏が付け加える。
「今年のカープのターニングポイントは、新井の2000安打。お膳立てしたように、エルドレッド(35)、鈴木誠也(21)、堂林翔太(24)の三者連続本塁打が出ましたよね。あの雰囲気を今でも引きずっているのがいいんです」
その神がかり的な出来事が乗り移ったかのように三者連続弾を形成した1人、鈴木が6月17日、18日に2試合連続サヨナラ本塁打を放ち、翌19日には決勝の本塁打。3戦連続V弾という驚異の活躍を見せている。
そんな選手たちにつられるかのように、緒方監督の言動にも「変貌」が現れた。
「コーチ陣に選手交代などいろいろ任せるようになった。昨年は自分で決めて、間違えて負けたり。今年は高信二ヘッドコーチ(49)が作戦コーチ役。実は緒方監督よりも頭に血が上りやすく、負け試合後には激高して選手を叱っています。監督がそれを見て『まぁまぁ』と止めるほど。自分よりさらに怒っている人がいるので怒るに怒れないんです。高ヘッドは、わざとそうして悪者になっている。頭脳的です。同時に緒方監督も、貧打の試合をスポーツ紙に『××を見殺し』などと書かれると『選手が悪い、と書くな。俺が悪い、と書け』と担当記者に文句を言う。選手はそれを知って、『俺たちのことをわかってくれている』とヤル気になっているわけです」(スポーツ紙デスク)
こうした快進撃に、25年ぶりの優勝はもはや決定的とばかりに、
「中国放送のスポーツ部では『優勝した時にどうするか』と、特番の構想をそろそろ考え始めています」(前出・迫氏)
ベテラン2人のW名球会入りとリーグV。これまた、神がかり的である。