メジャーリーグ球団幹部による直接視察は、その目的が日本球界とは少し意味が異なるようだ。
ロッテ・佐々木朗希が初の2桁勝利を挙げた10月1日の楽天戦で、メジャーリーグ10球団の関係者がスタンドに陣取った。とりわけドジャースはゲレン・カー副社長、アンドリュー・フリードマン編成本部長といった幹部職員が仙台入りする熱の入れようだった。
「日本でもドラフト1位候補のアマチュア選手を、スカウト部長や編成トップが直接、見に行くことがあります。力量を見極めるためですが、お目当ての選手に、直接視察の話はいずれ伝わります。他球団に向けて『ウチは指名する、重複するゾ』というメッセージにもなります」(ベテラン野球記者)
この日のドジャース幹部による直接視察は、佐々木にも伝えられたことだろう。親近感、誠意は伝わったと思われるが、ドジャースの直接視察には別の目的があった。
「これまで視察してきた担当スカウトの報告だけでは判断できない『何か』が生じたのでしょう」(メジャーリーグを取材するジャーナリスト)
9月15日の西武戦は、レンジャーズのクリス・ヤングGMが直接視察している。球団幹部の視察に「相手に誠意を伝えること」以外の目的があるとしたら、考えられるのはやはり「体力」だ。
「佐々木がシーズンを通して先発ローテーションを守った年はありません。シーズン中盤に登板後の回復が遅れ、2軍落ちしています。その繰り返しなので今後、体力不足を補う伸びしろがあるのかどうか。メジャースカウトの視点は投球内容よりも、登板後、次回先発に向けてどんな調整をしているのかに変わったと聞いています」(前出・ジャーナリスト)
フリードマン編成本部長は日本のメディアに向けて、次のようにコメントしている。
「明らかに真の才能を持つピッチャー。私は日本に何回も来たことがあるし、たくさんの才能のあるピッチャーを見てきたけれども、彼はこれまでアメリカに来た才能あるピッチャーたちの仲間に入る人材です」
その才能を発揮できる体力があるのか。その体力を養う練習はされてきたのか。160キロを超える速球を投げ続ければ、体のどこかに負担がかかる。それに耐えられる丈夫な体ができているのか。メジャーリーグの球団トップは、試合だけを見ているのではない。
(飯山満/スポーツライター)