リーグ優勝決定シリーズに進むのは大谷翔平と山本由伸のドジャースか。ダルビッシュ有、松井裕樹、カイル・ヒガシタニのパドレスか。大谷の同点3ランで幕を開けた地区シリーズだが、第2戦は先発登板したダルビッシュ有が変幻自在の変化球で、大谷を空振り三振(1回)、一ゴロ(3回)、投ゴロ(6回)と3打数無安打に打ち取り、チームを10-2の大勝に導いた。
ドジャースのMVPトリオを抑え切ったダルビッシュの鋼メンタルを象徴したのが、7回裏のアクシデントだろう。
初回、大谷が三振に倒れた後の、ムーキー・ベッツのレフト柵越えの打球を、パドレスの左翼手プロファーは、外野席のファンが伸ばした手をかいくぐって「ホームランキャッチ」。このファインプレーが面白くなかったのだろう。ドジャースファンからは7回裏のド軍攻撃中に左翼席からプロファーに向かってヤジが飛び、プロファーがこれを挑発。罵り合いの応酬からグラウンドに次々と飲み物などが投げ込まれ、ドジャースタジアムはパドレスの選手とドジャースファンが一触即発という、騒然とした雰囲気に包まれた。
苦々しい表情でレフト方向を見ていた大谷はいったんベンチ裏に引っ込んだが、片やダルビッシュは観客席から物が投げ込まれている間、マウンド上で低い姿勢で身を守るようにやり過ごすと、相方のヒガシオカとキャッチボールを始めた。再開後に大谷の盟友ヘルナンデスに四球を出すなど、内心では動揺していたのだろうが、その後のド軍打線を遊フライ、三ゴロ、中フライと三者凡退に打ち取っている。
ダルビッシュの愛妻・聖子夫人の公式ブログによると、プレーオフ進出が決まるや、パドレス選手夫人会がプレーオフ応援用のグッズを手配、約1カ月のプレーオフ遠征の間、家を守る家族への手厚いサポートをしてくれたという。
ダルビッシュの鋼メンタルぶりは、愛犬動画からも伺い知ることができる。大谷と同じく愛犬家で知られるダルビッシュは、世界で最も凶暴で、闘牛と戦うために交配された闘犬ピットブル3頭を含む6頭の中大型犬、飼育放棄された保護犬を飼っていた。
その後、ダル家に保護されたピットブル「セイジ」君は末期ガンで亡くなってしまったが、今でもダルビッシュは折に触れて、世界最恐ピットブルのブリちゃん、ゴンちゃんと遊ぶ動画をアップしている。
凶暴なピットブルですら、借りてきた猫のようにおとなしく飼い慣らすダルビッシュの「人たらし」「犬たらし」「鋼メンタル」がドジャース打線を封じ込め、野手の堅守を呼び込んだのだろう。
ダルビッシュは今季「家族に関する個人的な問題に対処している」として、7月上旬から9月まで制限リスト入りしていたが、9月の復帰明けからプレーオフまで不敗を続けている。もちろん留守中、5人の子供とピットブル2頭を含めた愛犬5頭の世話をする聖子夫人もまた「超人」だからにほかならない。
(那須優子)