ナ・リーグの地区シリーズ、ドジャースVSパドレス第2戦はダルビッシュ有の好投むなしく、禍根を残す試合になった。
7回裏、パドレスの右翼手タティスJr.が守備に就く際、外野席に向かって悪態をついたところ、観客がヒートアップ。タティスJr.と、初回にド軍ベッツの柵越え弾を「ホームランキャッチ」した左翼手プロファーに向けて、外野席と三塁席の観客がグラウンドに向かってボールや中身の入ったアメリカンサイズのペットボトルを投げ入れる騒ぎに。しかもドジャースのブルペンにまでボールが投げ入れられ、あわや負傷者が…という一触即発の事態に発展した。試合は8分間の中断を余儀なくされた。
試合後、ド軍のロバーツ監督は観客に苦言を呈した。
「私はこのスタジアムで1000試合以上見ているが、あんなことは初めてだった。いろんな感情が交錯していたのだろうが(ドジャースファンが)ボールを投げつけるなんて、見たくない」
だが、現地のスポーツ専門テレビ局ESPNの試合中継映像を見ると、今回の騒動の印象が180度変わってくる。
ESPNが映し出したのは、外野席でドジャースのユニフォームを着た東洋人に向かって中指を立てて挑発する、白人のパドレスファン。煽られたのが日系アメリカ人なのか、ダルビッシュVS大谷翔平の胸踊る直接対決を見に行った日本人なのかはわからないが、ダルビッシュと日系4世のカイル・ヒガシオカのバッテリーがドジャース打線を抑える傍らで、パドレスファンがアジア人ヘイトをしている映像は不快でしかない。
さらにX、インスタグラムでは試合後も、ドジャースタジアム周辺で両軍ファン同士が小競り合いをする様子が紹介された。中には両軍ファンが健闘を称えて肩を組む動画もあれば、ドジャースのユニフォームを着た女性が突き飛ばされるなど、フェイク映像や試合と無関係の動画であってほしい暴力的なものもある。
騒動後に円陣を組んで自軍選手を鼓舞したパ軍のムードメーカー、マチャドは試合後のインタビューで、初回に先制弾を放った自軍タティスが6回表に「仕返し」の死球を受けた報復として、7回裏に自らドジャースのブルペンにボールを投げ入れたと、あっさり「自供」した。20代の頃は血気盛んだったマチャドは、タティス死球の際にド軍先発のフラーティに詰め寄り、6回裏にもベンチに下がったフラーティと罵り合いになるなど、ド軍投手陣に報復の機会を伺っていたようにも見える。
そこで心配されるのは、禍根を残したまま1勝1敗で敵地ペトコ・パークに向かう大谷への「死球」や「報復」だ。
今季、50本塁打50盗塁を達成したが、この日、昨年の手術後初めて70メートル超えの遠投をするなど、まだリハビリ中。騒動が起きるや、ベンチ裏に下がった。
第3戦、第4戦では、大谷が緊急避難するアクシデントが起きないことを祈るばかりだ。
(那須優子)