今季のプロ野球レギュラーシーズン全日程が終了する中、一部選手のポスティングシステムによるメジャーリーグ移籍の動向が報じられている。
巨人・菅野智之に加え、10月8日には中日・小笠原慎之介がメジャー移籍に向けて球団と本格的に交渉に入ったことが明らかになった。加藤宏幸球団本部長が「夢に向かって進む気持ちを、我々が止められるかというところは難しい」と容認する意向を見せている。
一方でソフトバンクのように、海外FA権取得まではポスティングを認めないという球団もあり、容認するか否かは各球団に委ねられているのが現状だ。そこでメジャー移籍経験のある野球解説者の上原浩治氏が、これに言及した。
まずは菅野が今オフに海外FA権を行使し、メジャー移籍を目指すことについて、自身のメジャー挑戦時にネガティブ報道がなされたことを引き合いに出すと、
「自分自身にも不安がないわけではない。それでもあとから『あの時、挑戦しておけばよかった』とは思いたくないから決断をしてきた。智之の決断を尊重し、エールを送りたい」
上原氏はこれまでポスティング改革を訴えており、「容認しない球団はフェアじゃない」とまで言い放っている。菅野にとっては力強い味方になるが、ファンにしてみれば「お前が言うなよ」という気持でいっぱいではないか。いったいなぜか。それは上原氏の経歴を振り返れば容易にわかることだ。
1988年のドラフト時、上原氏は同時にエンゼルスと交渉を進めていたが、最終的に巨人を逆指名。入団会見では「メジャーでやるにはまだ自信がないから、日本を選んだ」と悔しさをにじませたが、実際は裏で多額の「裏金」を手にしたと言われる。
プロ入り後は「雑草魂」を掲げて活躍し、2005年にポスティングによるメジャー移籍を志願。ところが球団はこれを認めず、2009年にFA権を行使して、やっと念願のメジャー移籍を果たした。
上原氏は自身のポスティングが認められなかったことについて、
「巨人時代、ポスティングを訴えて『上原はわがまま』と言われた」
と、今でもことあるごとに恨み節を吐いているが、ポスティングを認めない巨人をわざわざ「逆指名」して入団したのだから、「何を今さら」である。
上原氏は同じくメジャーリーグで活躍した松井秀喜氏と対談した際、
「今の子たちはポスティングで(メジャーに)行くんですけど、ダメですよね」
と同意を求めたが、松井氏は苦笑しながら言葉を濁している。
「まぁルールがある以上、球団と、ね…」
松井氏も内心では「お互いFA権を行使したんだから、いつまでこだわってるんだよ」と思っていたかもしれない。
もはや上原氏にとってのポスティング問題は、決して忘れることのできないトラウマになっているようだ。しかしそれを口にするたびにファンの反感を買っていることに、そろそろ気付いた方がいいのでは…。
(ケン高田)