中日を退団した元優良助っ人、ダヤン・ビシエドの命運を決めるのは「円相場」だ。ビシエドはアメリカに出国してしまったが、中部国際空港に集まった記者団の前で改めて伝えたのは、ドラゴンズへの謝意と「日本球界での現役続行」希望だった。
「セ、パ両リーグともに、投高打低の傾向にあります。近年、外国人野手の不振に泣かされてきた球団は少なくない。今オフの米フリーエージェント市場での交渉次第となりますが、日本で9年もプレーしてきたビシエドの実績は、高く評価されています」(スポーツ紙記者)
ネックとなるのは来季36歳となる年齢と、推定3億5000万円の高額年俸だろう。後者に関しては、
「いったん中日から解雇されれば、新たな契約を結べる。実際に交渉するのはいちばん最後」
という声も聞かれた。ビシエドは「現役を続けたい」の一心なので、5000万円クラスの交渉でも応じてくれる…そんな見方もあるそうだ。しかし本当の問題は年俸の額ではなく、「景気」にあるのかもしれない。
「推定年俸は3億5000万円と報じられてきましたが、実際は違うんです。本当は5億円ぐらいもらっていた」(中日グループ関係者)
1億5000万円ものギャップが生じたのは「推定」が外れたのではなく、円相場によるもの。ビシエドは2021年オフに「3年総額1000万ドル」の契約を結んだが、当時のレートは「1ドル=131円前後」。しかし2022年夏季から円安が進み、以後140円台半ばから150円台で推移してきた。つまり、契約した頃よりも、1ドルあたり約20円の「誤差」が生じたため、中日球団は5億円前後の年俸を払い続けてきたわけだ。
ビシエド自身は現役生活を続けるにあたってお金の話はしていないが、1年の大半を日本で過ごしてきて、ドルを円に両替するたびにニンマリだったのでは…。
「他球団も外国人選手と契約する際、ドルで交渉します。立浪和義監督が就任した2022年以降、『これは!』と思った外国人選手が見つかっても、円役の影響で交渉がまとまりませんでした」(前出・中日グループ関係者)
ビシエドと交渉する球団はまず「ドルではなく、円にしてくれ」と頼むべきだろう。
(飯山満/スポーツライター)