サッカーJ1リーグが終盤戦に突入し、優勝争いや降格圏争いが注目される中、譲れない戦いを繰り広げているのが「首都決戦」だ。
FC東京に加えて、今季から町田ゼルビアと東京ヴェルディがJ1に参戦したことで、初めて在京3クラブが顔を揃えた。
特に負けられないのは、2012年シーズンからJ1で戦い続けているFC東京だ。2015年1stシーズン(当時は2シーズン制)と2019年に2位を記録し、優勝まであと一歩のところまで近づくことが多く、毎シーズン降格争いとは無縁の強豪クラブだ。
それだけに格の違いを見せつけて当然のはずだが、フタを開けてみれば、FC東京は大苦戦している。
第33節を終了した時点で、同じ「味の素スタジアム」をホームにする東京ヴェルディとは2引き分け。町田ゼルビアとはホームゲームで1-2と敗れている。
首都圏のクラブはFC東京が「顔」だと認識しているサポーターが多いが、ここまでまさかの白星なし。試合内容が悪く、第8節の東京ヴェルディ戦は前半に2点を先行され、後半のアディショナルタイムにFW遠藤渓太のゴールで辛くも同点に追いつく展開だった。続く第9節の町田ゼルビア戦はホームで負け、帰路に着くサポーターは重苦しい空気を漂わせていた。
さらにサポーターの鼻についたのは、町田ゼルビアの快進撃だった。徹底的に勝利にこだわる名将・黒田剛監督の「イズム」が選手に浸透し、次々と優勝候補を撃破。前半戦を首位で折り返すと、ACLE出場圏内をキープしている。
また、東京ヴェルディも第4節から第14節、第27節から第31節と負けなしで勝ち点を重ね、予算規模が少なく補強がままならない中、大健闘している。一方でFC東京といえば、
「夏場に失速して第24節から第29節まで白星を上げられず、一時は首都圏3クラブの中で屈辱の『最下位』へと転落しました。ようやく第33節で東京ヴェルディと勝ち点48で並び、得失点差で上回って6位に浮上しています」(サッカーライター)
町田ゼルビアの背中がまだ遠いのが悔しいところだが、今季は残念ながら「盛り上がり」という意味で蚊帳の外に置かれている印象が強いと、このサッカーライターは言うのだ。
「町田ゼルビアと東京ヴェルディは、昨季のJ2時代に因縁が勃発しています。首位攻防戦の3日前に町田がヴェルディの主力選手を引き抜けば、試合後の会見でヴェルディの城福浩監督が厳しい表情で『相手はとにかく倒れ、もうやれないかと思うくらい痛がり、それでプレーする。これを繰り返される中でよく辛抱したと思います』と苦言を呈しました。これ以降、両クラブはバチバチの関係で、互いのプライドをかけた戦いに、サポーター含めスタジアムが熱狂的な盛り上がりを見せるんです」
FC東京にとっては11月9日に行われる第36節、町田ゼルビアがホーム扱いの「国立決戦」が、唯一残されたチャンス。首都圏のクラブを引っ張ってきた存在感を見せられるか。
(風吹啓太)