回転寿司チェーン「スシロー」コラボメニュー問題が波紋を広げている。10月14日までの期間限定商品「鶏そば」を監修した奈良市内の人気ラーメン店「麺屋NOROMA」のグループ代表が、スシローで出されるラーメンの豚肩ロースのチャーシューが「レア(生)」で提供されており、スープの色も違うと、X上で苦言を呈したのだ。スシローは10月9日に、公式サイトで見解を発表。
〈旨味を引き出すため低温加熱調理という調理法でじっくりと加熱し、レアな状態に仕上げておりますが、提供商品によっては色味が異なる(肉本来の色味に近いピンク色になる)ことにより、監修企業さまをはじめ一部のお客さまからご指摘や不安の声をいただいております〉
〈本商品の「レアチャーシュー」は、厚生労働省の定める安全基準を満たした商品でありますため、安心してお召し上がりいただけます〉
安全性を強調しつつも「レアチャーシュー」の提供を取りやめて「炙りチャーシュー」に変更すると発表したのだ。当然だろう。「麺屋NOROMA」代表は、同じ飲食業界の人間として「食中毒」という緩やかな表現にとどめたが、加熱が不十分なレアチャーシューを食べれば、運が悪ければ命を落とす。そして特に怖いのが、3つの感染症だ。
まずは「ギランバレー症候群」。ドジャースの主砲フリーマンの三男が今夏、感染症からギランバレー症候群を発症し、一時は自発呼吸が止まって人工呼吸で延命していた。
ギランバレー症候群の原因は、蚊が媒介するジカ熱や食中毒を起こすカンピロバクターで、日本国内では「鶏肉のタタキ」「鶏刺身」を食べて全身の筋肉に力が入らなくなり、生涯人工呼吸器が外せなくなったり、半身麻痺や植物状態に陥った症例が報告されている。人工呼吸器や透析を駆使しても肺や心臓の筋肉が動かなくなることがあるため、死亡率は5%と低くはない。
E型肝炎ウイルスやサナダムシも怖い。E型肝炎は劇症化しやすく、特に妊婦の死亡率は30%を超える。妊婦でなくても肝硬変が急激に進行し、肝不全で死亡することがある。同じく食中毒を引き起こすA型肝炎と比べても、成人男性の死亡頻度は30倍といわれる。
そしてサナダムシは別の意味でヤバイ。今年4月にはアメリカで、生焼けのベーコンを食べた50代男性の脳からサナダムシが見つかった。アメリカでは昨年も「生焼けの肉を好む男性」の脳から、豚肉に寄生していたとみられるサナダムシが見つかっており、同様の報告例がアメリカと中国で毎年、相次いでいる。肉の中まで1分以上、70度以上の熱を通せば感染リスクは低くなるので、輸入肉を過剰に恐れる必要はない。
それにしても今回の店外バトル、「刺身」や「生の魚介類」を扱い、幼い子供や妊婦、高齢者などの家族連れに愛されるスシローでなぜ、監修企業が指示もしていない非常識な「レアチャーシュー」がゴリ押しされたのか。不可解さだけが残った。
(那須優子)