今季、打撃技術に磨きがかかっている要因の一つに、打撃フォームの変化があるという。さるスポーツ紙デスクが分析する。
「去年は打席にまっすぐ、すーっと立ち、テイクバックしてバットをトップの位置に持っていくフォームでしたが、今年はムダな動きが省かれ、最初からバットがトップの位置に来ている。そのため、強打者に対して執拗に投じられる内角攻めにも対応できるようになりました」
進化を続ける怪物に、ライバル球団のスコアラーもこう嘆くことしきり。
「現状、シンカーを苦手にしているようですが、早々に対応してくるでしょう。そうなると、大谷を完璧に抑えることは難しいと見ています。対策としては『大谷の前にランナーを出さないこと』ぐらいですかね。ソロホームランによる1点はしかたがない。幸い、田中賢介、中田翔、レアードといった前後の打者が機能していないため、彼らの状態を上げないよう徹底マークすることが“大谷対策”なんです」
日本ハムOBの野球解説者・角盈男氏も、
「今の打者・大谷に弱点らしい弱点は見つからない」
と太鼓判を押す。
「昔、若松さんが『安打製造機』と呼ばれていた頃は、どこに投げても芯に当てられていましたが、ある投手が『真ん中に投げればセンターライナーで抑えられる』と語り、実際に抑えていたんです。でも、大谷に同じことをやったらバックスクリーンにぶち込まれますよ。基本的な考え方ですが、抑えようと思ったら、対角線上の配球ですかね。『ホームランを打たれてもしかたがない』という気持ちで、本人が嫌になるくらいインコース高めに投げ続けること。こうするとバッターは体の開きが早くなる。そこで、外に緩急のついたボールを交ぜるんです。とはいえ絶対ではなく、長打になる可能性が低くなるだけ。ヒットや四球で済むならラッキーですよ」
まさに「向かうところ敵なし」の打者・大谷。唯一の懸念らしい懸念といえば、昨年10月の日本シリーズで痛め、WBC欠場の原因ともなった右足首の状態だ。
ところが、球団関係者は、
「いい意味でケガをしてくれた」
と功名につながったとまで語るのである。
「ケガしたことによって、踏み込んで無理に引っ張らず、流し打ちする傾向が強くなった。これに首脳陣たちは、『率が伸びる』と歓迎しています。もともと大谷は、昨年、流し打った打球全69本のうちヒットが24本、中堅方向では54本中25本がヒットと、逆方向のほうが高打率なんです。逆に引っ張るバッティングでは、あまりにパワーがあるため、打球がライナーになってホームランの確率が下がります。昨年、22本塁打のうち、レフトに10本、センターに5本に対し、ライトは7本だけ。流し打ちでホームランの量産も期待できます」
もともと「バッティングはそんなに練習しなくてもできる」と自負し、あまり練習時間を割いてこなかったというが、ケガにより全力疾走が制限された春季キャンプで、見違えるようにウエートトレに励み、スイングを続けていた。これがさらなるパワーアップの効果を生んだのだろう。