10月11日に全国ネットで中継され、大々的に開幕したのがバレーボールの新リーグ「SVリーグ」だが、これに様々な声が噴出している。
開幕戦は東京体育館で行われた「サントリーサンバース大阪×大阪ブルテオン」。それぞれ新リーグに合わせてチーム名を改称しているが、前身のVリーグ2023-2024シーズンのファイナル「サントリーサンバース×パナソニックパンサーズ」の再戦。運営側は熟考の末、開幕戦にこの組み合わせを選んだという。
しかし、それはほぼタテマエ。大阪がホームという2チームを、記念すべき新リーグ開幕にわざわざ東京で戦わせたのは、今季からサンバースに電撃移籍した日本代表の高橋藍と、ブルテオン所属の西田有志の人気をアテ込んだからだ。
事実、最高額8万円という席をはじめ、万単位の席が発売から1時間で完売というプラチナチケット化。当日のグッズ売り場には1キロもの行列ができ(ホントか!)、販売ブースに入るまで2時間待ちの事態となった。メディアが大挙して押しかけ、フィーバーぶりを報道。高橋ファンや西田ファンの声を拾っていた。
ところが高額チケットを片手に会場で観戦した客、そして中継を見た視聴者からは、違和感ありありの声が続出することに。スポーツライターが解説する。
「様々なスポーツリーグの開幕戦を見てきましたが、ここまで女性だらけの会場は見たことがありません。特にコートに近い席は9割9分が女性でした。そしてなにより、応援が静かといいますか、まるで観劇でも鑑賞しているかのような雰囲気。これが日本代表戦、または代表選手が出場しているからとチェックする人が多かったイタリアのリーグなどに比べ、まるで盛り上がっていない印象を与えたのです。8万円や3万円といった大枚をはたいて押しかけた多くの女性は高橋と西田を見たいのであって、所属チームのファンではない。だから、どちらを熱烈に応援するともなく、会場MCから強制された手拍子をするだけ。これが妙な雰囲気に拍車をかけたのです」
事実、会場に詰めかけた高橋ファンからは「得点を取るのが外国人ばかりでつまらなかった」という声が、少なからずあった。まさにこの日の期待が何だったかを象徴している。
その一方で、会場に行くには及ばないライト層のテレビ視聴者は、別の不満を抱いていた。
「試合内容がお粗末すぎました。高橋所属のサンバースはサーブレシーブ成功率が29.5%と、にわかに信じられないほどひどい数字。前年度のチャンピオンチームとしては、赤っ恥レベルですよ。故障者がいるとはいえ、もう少しチームを作ってこなかったのかと、見ていて腹が立ちましたね。優秀なチームは55%前後というのがアベレージですから、これではまともな攻撃ができません。出来が悪かったにしても、高橋が見せ場を作れないのは当然で、体格で勝る外国人が強引に点を取りにいくしかなかった。試合は白熱の展開とは無縁の、ブルテオンのストレート勝ちでした」
日本のリーグはこんなもんか…そう思われても仕方のない体たらく。この1試合だけで「見切る」人が続出したのだと。
運営側が気合を入れまくった開幕戦は、内容的には大失敗。にわか層には一過性のミーハー人気はあるが、高いチケット代を出してまで「見てみたい」と思わせる内容にはほど遠かったというのが結論のようだ。
しかし前出のスポーツライターは、
「あの開幕戦だけ別モノと考えてほしい」
と、新リーグを擁護する。
「10月14日に地元・大阪で行われたサンバースとブルテオンの一戦は、開幕戦の妙な緊張感から解放されて、非常にレベルの高い素晴らしい試合でした。フルセットの末、ブルテオンが連勝しましたが、高橋と西田は代表戦に近い動き。おかげで他の日本人選手、キューバやアメリカなど他国の代表経験者が躍動して面白かった。会場は確かに女性だらけでしたが、強制された手拍子を忘れて、自然と『うわぁー』という声が何度も上がっていましたからね。こちらを全国ネットで中継するべきでした。あの開幕戦だけ、あまりによそ行きの雰囲気が漂っていたと言っていいでしょう」
残念ながら、この大阪対決を除けば、男子の4カードは東京グレートベアーズが例年の開幕時の2.5倍以上の集客で盛り上がった以外は、どこの会場も6~7割ぐらいの入りだった。
高橋と西田絡みの今後のカードは、チケット代を釣り上げているにもかかわらず売り上げは上々の様子だが、いろいろがイマイチだった開幕戦のおかげで、しばらくは色眼鏡で見られることだろう。
このミーハー人気を踏み台にしつつ、リーグの魅力をいかに発信していけるかが、SVリーグの腕の見せどころなのである。
(高木莉子)