さながらハリウッド映画「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」のシーンのようだった。
今季、イタリア1部セリエAのモンツァで活躍した、バレーボール男子日本代表の高橋藍が来季、日本のサントリーサンバーズに移籍することが決まった。
モンツァはプレーオフ決勝で惜しくもペルージャに敗れたが、高橋はリーグ準優勝に大いに貢献し、シーズン終了後の5月2日に帰国していた。5月28日に会見を開く予定で、サントリーとの契約は7月からになる見込みだ。
バレーボールは今年10月に、新リーグ「大同生命SVリーグ」が誕生する。2024年~2025年の開幕シーズンを、日本代表の絶対的エースたる高橋と、サントリーでチームメイトになる兄の塁が盛り上げることになる。
高橋のSVリーグ加入で、国内スポーツビジネスの勢力図は大きく変わる。羽生結弦の電撃結婚と離婚、宇野昌磨の引退でファン離れが加速するフィギュアスケートに代わり、今も入手困難なVリーグの観戦チケットが、さらなるプラチナチケットに大化けする見込みだ。
というのも、超イケメンの高橋には中国、韓国、タイからインターネット中継で試合を視聴する熱狂的ファンがいる。TikTokのフォロワー数は50万人超だ。Vリーグのチケットは、販売開始から2時間足らずで完売。しかも選手がいるコート近くのアリーナ席1万5000円から売り切れていく。
それが高橋のサントリー入団で、バレーボール人気の高いイタリアやトルコ、ブラジルよりも近く、円安で旅行に来やすい日本のSVリーグに、アジアのファンが試合観戦にやってくるのは確実とみられる。
一般社団法人ジャパンバレーボールリーグは、SVリーグを世界最高峰のリーグにするとの目標を掲げているが、すでにチケット代金ではイタリアを抜いてトップクラス。そのチケット代金が、インバウンドでさらに高騰するかもしれない。
ちなみにイタリアは観戦チケット代だけでなく、海外のバレーボールファンから滞在費を徴収する、国外からの観戦ツアーを企画している。SVリーグでもイタリアのセリエAのように地方のアリーナで試合を開催し、滞在費やツアー代金を徴収すれば、経済効果が期待できる。
SVリーグは現在の事業規模9億円を、3年後には放映権料をメインに30億円まで拡大する見通しだという。もちろん市場拡大には高橋兄弟の人気だけでなく、パリ五輪で日本代表が結果を出すことが求められるだろう。
(那須優子)