2026年サッカー北中米W杯アジア最終予選。前半戦最大のヤマ場と言われたアウェーでのサウジアラビア戦に、日本代表は2-0で快勝した。3連勝で勝ち点を9に伸ばし、2位のオーストラリア、サウジアラビアに勝ち点差で5をつけ、さらに得失点差でも+14として独走状態に入った。
最終予選の組み合わせが決まった時、無条件で本大会の出場権を得られる2位以内を日本、サウジアラビア、オーストラリアの3カ国で争うと予想されていた。
その中でも、アウェーのサウジ戦は最大の鬼門とされた。サウジでの試合は過去3戦全敗で、ノーゴールに抑えられている。しかも中東の高温多湿の環境で6万人の大観衆が入り、異様な雰囲気に包まれる「完全アウェー」だからだ。
現に9月の中国戦(7-0)、バーレーン戦(5-0)とは違い、サウジは自陣でプレーする時間が長かった。サウジの選手のレベルは高く、個人でもワンツーでも日本のプレスを剥がし、攻め込んでくるシーンが見られた。 14分に日本が先制しても、試合の流れはよくなかった。27分には3連続シュートを打たれた。なんとか体を張ってブロックしたが、試合の流れはサウジにあった。42分にはGK鈴木彩艶のワールド級のスーパーセーブに助けられた。どちらかのピンチで同点にされていたら、結果は違っていたかもしれない。
後半に入り、サウジがメンバーやシステムを変えて点を取りにきたが、それが日本の守備の安定に繋がり、後半は日本が完全に試合をコントロールしていた。81分には伊東純也のコーナーキックを小川航基が頭で合わせて追加点。途中出場の2人での追加点には、選手層の厚さを感じる。アウェーで先制し、苦戦しながらも後半はゲームをコントロールしながら、追加点で引き離す。まさに強豪国の戦い方だった。
この試合で存在感を発揮したのは、ボランチの守田英正。先制点は右ウイングバック堂安律のクロスを左ウイングバックの三笘薫が中央に折り返し、守田が頭で落として鎌田大地が押し込んだ。このゴールの起点となったのが守田だった。
この先制点は中盤の底にいた守田の、南野拓実への縦パスから始まっている。縦パスを入れた瞬間に3列目から攻め上がり、ペナルティーボックス内に入り込んだ。だから鎌田のゴールをアシストできたのだ。普通なら縦パスを入れたら後ろからのサポート役に徹してもよかったのだが、思い切ってボックス内に入っていったことが先制点に繋がった。
先制してからのバランスのとり方も冴えている。ボールを奪った後、一瞬で周りの状況を把握して無理に攻めることをせず、時間を作って落ち着かせていた。ドリブルでボールを前に運べるし、ラストパスも出せる。もちろん、点も取れる。そして的確な戦術眼を持っている。今、日本代表で最も輝いている選手だろう。
10月15日、ホームでのオーストラリア戦に勝てば、本大会出場はほぼ決まったようなものだ。ただ、気になるのはアジア杯で露呈した、ロングボールとハイプレスに弱いという課題。これはまだ試されていない。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。