ドジャースのナショナルリーグ優勝の行方は、山本由伸の右腕次第――。
メッツとのナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦(日本時間10月18日)に、山本由伸が先発登板する。
山本は地区シリーズ、パドレスとの第1戦で3回5失点と炎上。だが第5戦の先発にも起用され、5回無失点の好投でリーグ決定シリーズ進出を決めた。
「(気持ちを)簡単には切り替えられませんでした」
そう振り返った山本の復調のきっかけは、ダルビッシュ有から先制弾を放ったキケ・フェルナンデスからの励ましだったと、キケ本人も同席した試合後の記者会見で明かしている。
「(敵地)サンディエゴに行った時もキケが誘ってくれて、カフェで2時間くらい話をしたり、本当にチームメートのおかげですね」
山本を試合でもプライベートでも救ったキケは、日本のアニメ好きで知られる。特に好きなのが「ドラゴンボール」で、ドジャース選手の顔と名前が一致しない視聴者でも、カメラの前で大谷翔平と一緒に「カメハメ波」「フュージョン」ポーズをとるあのド軍選手は印象に残っているだろう。
シーズン中はドラゴンボールのアニメを見ながら眠ることもあると、日本人のド軍担当記者に語ったこともある。チームのムードメーカーとしては、愛するアニメの国、日本からやってきた山本の苦境を放っておけなかったのだろう。
このエピソード、ドジャース随一のヤサ男キケの気遣いには感動するが、入団会見から10カ月で山本がチームメイトとアメリカ西海岸を散策するほど馴染んでいることにもびっくりする。山本は今シーズン中、試合中はできるだけ通訳を介さず会話していると告白しており、
「チームメートが気遣ってくれる。英語で話しかけてくるので、理解しようとしている。英語は簡単ではないけど、上達していると思う」
と手応えを語っていた。
そこで第4戦に懸念されるのが「敵地でのヤジ」だ。なにしろメッツは昨年、大谷と山本2人の獲得に乗り出しながら、フラれている。特に山本はメッツのオーナーで資産家のスティーブ・コーエン氏自らが来日し、山本の家族と食事をするなど、熱烈なラブコールを送っていた。
メッツファンの大谷と山本に対する怨嗟は相当なもので、リスニングが上達した山本の耳には、ファンからの激しいヤジが届くことだろう。
(那須優子)