宗山塁に5球団、金丸夢人には4球団が1位指名で競合した今年のプロ野球ドラフト会議で「事件」が起きていた。オリックスの6位指名で、約20分の中断が発生したのだ。
中継ではオリックスのテーブルでNPB(日本野球機構)担当者と球団側が長く協議する姿が映し出されたが、最終的にNTT東日本の片山楽生投手が指名された。NPB関係者によると、オリックスが指名した選手が「指名可能ルール外」だったため、担当者による確認が行われたのだという。
この異例の事態で推測されたのは「プロ志望届を出してない高校生を指名した」「森井翔太郎を強行指名」「海外選手絡みではないか」といったもの。ただ、桐朋の森井はプロ志望届を提出した上で希望進路をメジャーリーグに絞り、ドラフトで指名があった場合も入団を辞退する旨の文書を12球団に提出していることから、そもそも最初から協議する理由はない。オリックスの湊通夫社長は「何も言えない」と、真相を明かすことはなかった。
オリックスとしてはその選手を「隠し球」として指名するつもりだったのだろう。指名可能かどうか事前にきちんと確認していなかったのは、完全にスカウトの失態といえる。
オリックスの「謎指名」といえば、ファンの間で伝説になっている選手がいる。2020年のドラフトで育成6位指名され、BCリーグ福島レッドホープス初となるNPB入りを果たした古長拓だ。
古長は指名された時点ですでに26歳。身長164センチと小柄な上に、福島では通算2年で打率2割7厘、0本塁打、17打点と見るべきところはなく、オリックスファンからは「3軍の数合わせ」「福島レッドホープス・岩村明憲監督とのコネ作り」など様々な「説」が浮上した。
担当スカウトは「熱いハートで内野すべてを守れる。巧みなバットコントロールが魅力の独立リーグを代表する選手」とコメントしたが、結局、古長はファームで11試合、打率1割2分5厘と全く成績を残せず、わずか1年で戦力外となっている。
オリックスは近鉄と合併後、ドラフト1位指名のくじ引きで1勝16敗と大きく負け越しているが、結果的に外れ1位の選手が活躍し、3連覇に貢献。そのため事情通のファンの関心は、むしろ下位指名に向くことが多い。
まさか古長の再来ではないだろうが、本来の6位指名がいったい誰だったのか、気になって仕方がない。
(ケン高田)