「東が西武で、西東武」という歌詞でお馴染みのビックカメラのテレビCMが、池袋駅に乗り入れている路線名を連呼する新バージョンに変わって1年が経つ。旧CMの歌詞通り、池袋駅東口にある池袋西武の改装とヨドバシカメラ参入ばかりが目立つが、東武百貨店やロサ会館の取り壊しも含めた「西口再開発」が進行中なのをご存知だろうか。
今年の夏、三菱地所・三菱地所レジデンスの「池袋駅西口地区市街地再開発事業」、東武鉄道の「池袋駅直上西地区市街地再開発事業」の2大再開発事業が発表された。
住民向け説明会などによると、再開発の対象となるのは、東京芸術劇場前からみずき通りまでのエリアで、再開発後の複合施設の総面積は延べ約58万2700平方メートル、東京ドーム12.5個分にあたる。
この三菱と東武鉄道の2大再開発に合わせて、都内城北エリア最大の繁華街で、再開発地区に隣接するロマンス通り界隈やロサ会館も建て替え、再開発される予定だという。
東武百貨店池袋本店は2027年度から解体工事が始まり、西口の立教大学方面に延びる駅前の大通り「アゼリア通り」と、旧丸井前の五叉路が潰される。代わりに歩行者専用道路が整備され、駅北側には東西通路ができるなど、今より便利になるのは明らかだ。
ところが再開発が終了するのはなんと、20年後の2043年(予定)。この記事を読んでいる読者はその頃、何歳になっているだろうか。立教大学の卒業生でもない限り、再開発後の街並みを見る機会などどうなるか…となるかもしれないし、現在の西口の光景など忘却の彼方だろう。
再開発を前に、ロサ会館に入っていた昭和43年(1968年)創業の「キッチンチェック」が、今年7月27日に営業終了。同じくロサ会館に入る、日本で初めてインベーダーゲームが設置されたゲームセンター「タイトーステーション」は今も昔懐かしいアーケードゲームで遊ぶことができ、昼夜問わず賑わっているが、2027年度から始まる西口再開発を前に、これらの「池袋サブカルチャー遺産群」がいつまで営業を続けるかは不透明だ。
すでに石田衣良のベストセラー小説や、長瀬智也主演ドラマの舞台となった池袋ウエストゲートパーク、丸井、丸井スポーツ館、ビクトリアが池袋西口から姿を消した。さらに駅前バスターミナルとアゼリア通り、周辺の商業ビル、安い居酒屋やリトルチャイナタウンもまるごと姿を消し、どこにでもあるような個性のない高層ビル群に変貌してしまう。2027年までに池袋西口を一度は散策しておくことをお勧めしたい。
(那須優子)