芸能

【独占インタビュー】「虎に翼」でブレイク…山﨑翠佳「高校3年生で妊娠の少女」俳優人生を決定づけた主演作の現場

 コブクロMVのコンテンポラリーダンスで脚光を浴び、NHK朝ドラ「虎に翼」ではヒロイン寅子のクラスメイト佐野光子役に。そんな山﨑翠佳が初の長編映画「カフネ」の主役として、きらめくほどに繊細な少女を見事に演じている。そして神秘の町、三重県熊野市でのオールロケの自然がもたらす空気感…。

 これは小さな田舎の港町を舞台に、命を宿した少女・澪の決断と希望の物語だ。高校3年生の澪は、彼氏である渚の子を妊娠してしまうが、彼氏や家族には打ち明けられずにいた。様々な困難に直面し、今まで言葉にしてこなかった気持ちを伝えるために、渚の元へと向かうが…。

 俳優人生の分岐点となったこの作品の撮影現場を、山﨑がインタビュー激白した。

――ロングランが決まりましたが、お客さんの反応はどうでしょう。

山﨑 「カフネ」の劇場公開が叶ったこと、そして多くの方に「カフネ」を見ていただけたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。劇場に毎日通う中で、お客様から暖かいお言葉をいただき、映画は見る人によって受け取り方も感じ方も違うんだなと改めて思いました。

 ある時、自分も同じような体験をしたと、声をかけてくださった女性がいました。「この映画を当時見ていたら、誰かに相談できたかもしれない。この作品を多くの人に見てもらいたい。見てもらうべき」という言葉に、映画には誰かを助ける力があるんだと、改めて感じました。多くの人に「カフネ」を届けなければ、という気持ちが生まれましたね。

――演技を始めようと思ったきっかけは何ですか。

山﨑 高校の人権映画会という授業で「手紙」という映画を見た時に、ボロ泣きしたんです。この体験が「とにかく演技をしたい」と私を駆り立ててくれました。そして次の日には演技を習いに行きました。演技との出会いが、私の人生にとっては非常に大きかったです。演技の先生との対話を通じて、自分の思考の癖、それに伴うコミュニケーションの在り方などについて知ることができました。さらに、演技について学ぶ中で、作品は誰かのことを自分ごととして「体感」できるものである、作品を通じて想像力を働かせることで世界や人に優しくなれるきっかけになる、と思いました。

 演技レッスンを受けるにつれ、深い感情を体験して、真に交流すること…つまり「今、ここに生きること」が私の歓びだと感じるようになりましたね。今ここで生まれる演技を見た時、心が震えます。だからこそ、今度は私が「役としてそこに生きる」ことで、作品に貢献できるよう、ひいては多くの人の心を震わせる作品の一部になれたらと思っています。

――「カフネ」の撮影現場はどうでしたか。

山﨑 現場では皆さんの気持ちが同じ方向を向き、作品のために情熱の全てを懸けていることを肌で感じていました。上映が決まったという電話を受けて、嬉しくて飛び跳ねてしまいましたね。人の想いがひとつになった時、その流れはどんな形でも良い方へ行く、という確信が生まれるのだと思いました。作品作りに本気で向き合って、敬意と感謝を忘れない現場に参加できたことは、非常にありがたい経験でした。そしてこれからも、もっと映画に携わりたいと思いました。

――「カフネ」で影響を受けたことはありますか。

山﨑 映画は各部署が作品のことを想像して「これだ!」と思うものを持ち寄って、ひとつになるものだと思いました。それぞれの唯一無二の感性が集まることで、計り知れない芸術が完成する。目に見えない部分にも多くの想いがこもっており、改めて映画は総合芸術だと実感しました。役作りは毎回、苦しいこともありますが、全力を尽くせた時は清々しさがあります。そして完成した作品が誰かに届くという高揚感には、変え難いものがありますね。

 正直、「カフネ」の撮影を終えた後、自分がこれからも俳優としてやっていけるのだろうか、という気持ちが浮かびました。澪を演じながら、自分の弱さが滲んでいたと感じたからです。でも振り返るとやっぱり「表現することが好き」という自分がいました。だからこそ、本当に越えるべきは自分自身だと感じました。次こそはもっと役に寄り添えるよう、役として真にその言葉を言えるように。そして「弱い自分に打ち勝ち、とにかくこの道を続ける」のだと、俳優として生きていく覚悟が生まれました。私の「原点」となる作品が「カフネ」でした。

――山﨑さんにとって演技とは?

山﨑 役として今ここに生きて、相手と交流することです。どんな役を演じても、その人間の個性は出ます。でも役になり切れていない時、自分が滲んでしまうことがあります。いかにそれをなくすか、どうしたら役として生きられるかを、探究していこうと思っています。

――今後どんなことをしていきたいのか、教えてください。

山﨑 様々な役に挑戦したいです。役の動機や深層心理を想像する時、同時に自分も開拓でき、時間を忘れるほど没頭してしまいます。役と出会うたびに、新たな発見や気づきがあります。監督ごとに異なる演出があるからこそ、様々な役柄や監督との出会いを通じて、自分の演技の幅を広げていきたいと思います。

――そのために「カフネ」は重要な位置づけになるということですね。

山﨑 私にとって、人生を大きく変えてくれた作品です。俳優を続けるという決意を固めることができ、人としても「自分の心の声を聞いて人生を選択する」ことの大切さや「過去があるから今の自分がいる」という考え方…生きる上で大切な価値観を教えてもらいました。その作品を多くの方に見ていただけることには、感謝でいっぱいです。

 皆様が「カフネ」をご覧になり、どんな気持ちを感じたとしても、それが皆様にとって素敵な体験となることを願っております。三重県熊野市という美しい土地を感じ、そこで生きる登場人物たちとともに「カフネ」をお楽しみください!

※「カフネ」はポレポレ東中野で上映中。11月2日からは、大阪シアターセブンにて、11月22日からは、愛知県の刈谷日劇での上映も決定した。

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