サッカーの世界年間最優秀選手賞「バロンドール」の授賞式が10月28日に行われたが、なんと異例の大荒れ模様となった。
今年は前人未到の8度の受賞歴を誇るアルゼンチン代表FWリオネル・メッシや、5度受賞しているポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドが、ついに候補者30名にノミネートされず。サッカー界の新たな「顔」が誰になるのか、例年以上にワクワク感は高まっていた。
そしてFIFAランキング上位100カ国のジャーナリスト投票で選ばれたのは、スペイン代表のMFロドリだった。スペイン人選手としては、64年ぶり3人目の快挙を達成したことになる。受賞理由をサッカーライターが解説する。
「所属クラブのマンチェスター・シティで、4連覇に貢献しました。スペイン代表としては、夏に開催された欧州選手権で12年ぶりに優勝を飾り、大会MVPに選ばれています。中盤の大黒柱として圧倒的な存在感を放ち、卓越したテクニックでボールを取られることがなく、パスミスをするシーンはほとんど見たことがありません。メッシやロナウドとは違うタイプですが、受賞は文句なしと言っていい」
ところが、だ。ロドリの受賞にブチ切れたのが、最終順位が2位だったブラジル代表のFWヴィニシウス・ジュニオールだ。
所属クラブのレアル・マドリード(スペイン)では、リーグ戦で15ゴールを記録。欧州クラブの頂点を決めるチャンピオンズ・リーグでは、決勝戦でゴールを奪って優勝に導くなど、大会6ゴール5アシストという文句なしの成績を残した。
「最有力候補の名前に挙がると、バロンドール発表の数日前には、ヴィニシウスで決まりという情報まで流れていました」(前出・サッカーライター)
それがフタを開けてみれば、ロドリに決定。当日はノミネートされたレアル・マドリードのチームメイトらと会場でお祝いをする予定だったが、全員が授賞式をボイコットした。サッカーライターが続ける。
「授賞式の直前に、バロンドールの受賞者はヴィニシウスではないという話がクラブ関係者に届き、パリに向かうはずのチャーター機を当日、キャンセル。チームの公式専門チャンネルで放送を予定していた特番は、中止になったそうです」
本人にとっては予想外の事態で、授賞式の2日前に行われたバルセロナとのエル・クラシコでは、ホームで0-4と、衝撃的な敗戦。その試合中に、
「バルセロナのMFガビと口論になり、ガビが指を4本立てながら『4-0だぞ』と煽りました。挑発に乗ったヴィニシウスは執拗にガビを追いかけ『俺はバロンドールを獲るんだぞ』と言い返していたのです。どっちもどっちですが、まるでクソガキのケンカです」(前出・サッカーライター)
ところがヴィニシウスは9月29日のアトレティコ・マドリード戦でも、相手チームのMFコケと口論を展開する。なんと、コケの顔に自身の顔を近づけて「俺はチャンピオンズ・リーグに2回も勝った」とやったのだ。この瞬間湯沸かし器的な性格は、以前から問題視されていた。
バロンドールを選ぶ基準としては、個人やチームの結果のほかに、品格およびフェアプレー精神が求められる。これまでのピッチ内での態度が僅差の票に影響したとするなら、ヴィニシウスにはサッカーの練習以外に、根本的にメンタルを改善させるトレーニングが必要となりそうだ。
(風吹啓太)