今季のルヴァンカップ決勝(11月2日・国立競技場)は、3年ぶり2度目の優勝を目指す名古屋グランパスと、初優勝を目指すアルビレックス新潟の対戦となった。
堅守速攻の名古屋と、パスサッカーの新潟。対照的なチームの激突は、予想以上に面白い試合になりそうだ。
名古屋は元オーストラリア代表GKミッチェル・ランゲラックを中心にした堅い守りからの、カウンターが得意。攻撃の中心はなんといっても、スピードスター永井謙佑だ。タテに抜けるスピードは衰えを知らない。
さらに、今季は故障が多く思うような結果を出せなかったが、決定力のあるキャスパー・ユンカー、そして高さと強さを兼ね備えたパトリックと、個の力がある選手を揃えている。
そしてもうひとり注目してほしいのが、山岸祐也だ。アビスパ福岡から移籍してきて期待されたが、故障などもあり、なかなか結果を出せなった。だが準決勝の横浜F・マリノス戦では2試合とも途中交代で得点を決め、調子を上げてきた。
一方の新潟は、毎年のように主力選手が移籍していく中、今季も華麗なパスサッカーを展開している。欧州に移籍した伊藤涼太郎(シントトロイデン)や三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)のようなスター選手はいないが、ここにきてチームの得点源である谷口海斗(リーグ10点)がケガから戻ってきたのは大きい。準々決勝の町田ゼルビア戦の第1戦で4ゴールを決め、準決勝進出の立役者となった長倉幹樹からも、目が離せない。
個人的に注目してほしいのは、きれいに刈り上げた坊主頭がトレードマークの小見洋太だ。パリ五輪代表候補だったが、最終メンバーに選ばれない悔しさを味わった。
キレのあるドリブルが得意で、豊富な運動量を生かして前線から積極的にボールを追いかけ、自陣に戻って守備陣を助けるなど、チームのために汗をかける選手だ。名古屋が個の力で勝負するのに対し、新潟はチーム力で勝負する。
名古屋のランゲラックは、今季での退団が決まっている。来年1月には古巣メルボルン・ビクトリーに移籍する。7シーズンもゴールマウスを守ってきた守護神を優勝して送り出したい、という気持ちがチーム内にあるのは事実だ。
一方の新潟は、初優勝に向けてサポーターの強力な後押しがある。試合当日、試合時間に間に合う上越新幹線の指定席は完売。臨時新幹線も指定席は一瞬で完売したという。バスツアーも販売してすぐに売り切れと、当日の国立競技場は新潟サポーターが圧倒するのでは、といわれている。
名古屋の長谷川健太監督と、その3歳下の新潟・松橋力蔵監督は、日産自動車(現横浜F・マリノス)時代の先輩後輩として同じ釜の飯を食った仲で、この対決構図も面白い。
見どころはいくらでもある。今季の両チームの対戦成績は、1勝1敗の五分。どちらが自分たちのサッカーに引き込めるか。先制点が大きなカギを握ると思うが、どちらが勝つかという予想は難しい。それくらい力の差はないからだ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。