日本人プレイヤーが多く活躍する欧州サッカーだが、第4節まで終了したラ・リーガ(スペイン)で大苦戦しているのが、日本代表のMF久保建英が所属するレアル・ソシエダだ。
開幕戦でラージョ・バリェカノに1-2で敗れるなど、1勝2敗1分けとスタートダッシュに失敗している。だが、対戦したチームはすべて格下、本来なら4連勝しても不思議ではなかった。
試合内容は格下などというのがおこがましいほどお粗末なものばかり。特にひどかったのが、第4節に敵地で挑んだヘタフェ戦だ。攻撃陣は最後まで一度も噛み合うことがなく、シュート数はわずかに1本でスコアレスドローに終わった。
不調の原因はまず、間違いなく夏の移籍市場での失敗だろう。
欧州の頂点を決める「ユーロ2024」で優勝したスペインのメンバーが5名所属する中、ジョキン・アペリバイ会長は「主力の残留こそ最大の補強」と豪語していた。
しかし、そんな会長の思惑をよそに、代表メンバーのDFロビン・ル・ノルマンがリーグ上位を争うアトレティコ・マドリードに移籍。MFミケル・メリーノはアーセナル(イングランド)を選んだのだ。
欧州リーグを取材するサッカーライターがその絶望ぶりを解説する。
「ドイツ代表のDFマッツ・フンメルスと交渉していましたが、中心選手を引き抜かれたことで移籍市場が閉幕する土壇場で決裂。他のポジションでも即戦力を獲得できなかった。悪い流れは新シーズンが始まってからも続き、ヘタフェ戦でマリ代表のDFアマリ・トラオレが右膝前十字靱帯断裂の重傷で今季絶望になり、同じくヘタフェ戦後の検査でMFブライス・メンデスに右足第5中足骨骨折が発覚と、まるで呪われてますね」
いきなり野戦病院と化し、調子が一向に上がらないチームの救世主として久保への期待は高まっているが、肝心の久保とイマノル・アルグアシル監督との関係がギクシャクしていることが、2つ目の不調原因だ。
開幕戦こそ先発出場を果たしたが、第2節のエスパニョール戦は負けた責任を取らされるようにベンチスタートとなった久保は後半21分から出場すると、同35分に右サイドでボールを受けて、相手2人の間をドリブル突破し豪快な一撃で決勝点を奪った。ところが、
「ゴールを決めた久保は喜ぶどころか不機嫌な顔を隠さず、祝福に駆け寄るチームメイトも振り切り、ベンチ前で耳に手を当てるゴールパフォーマンスを披露。地元メディアやSNS上では『先発を外した監督に向けての挑発』と物議を醸しました。その後、予想以上に騒ぎが大きくなり、久保がアルグアシル監督に謝罪。先発を外されたことに不満を漏らしたわけではないと説明したうえで、適切ではなかったと非を認めたそうです」(前出・サッカーライター)
しかし、騒動がメンタル面に影響を及ぼしたのか、第3節からは2試合連続で先発したものの、本調子には程遠いプレーに終始している。
また、チーム全体でコンディションが上がらない不調原因の3つ目は、プレシーズンでの過ごし方にあったと、前出のサッカーライターが指摘する。
「ソシエダは23-24シーズン終了直後の5月末にジャパンツアーで来日し、東京ヴェルディと対戦すると、7月下旬にはガンバ大阪と試合をするために再来日しました。プレシーズンに2回も同じチームが日本に訪れるのは異例のこと。特に7月は予定していたトゥールーズ(フランス)とのプレシーズンマッチを急きょキャンセルしてまで、久保の凱旋試合を優先。ジャパンマネーのあぶく銭は稼げたかもしれませんが、度重なる長距離の移動で選手のコンディション調整は難しく、新シーズンにモロに響いてしまったことは間違いありません」
オフシーズンは久保にリヴァプール(イングランド)など移籍話が浮上していた。チャンピオンズリーグ出場権を目指すどころか、昨季の相次ぐ主力の離脱でヘタしたら残留争いに巻き込まれそうな気配のソシエダだけに、久保が残留したことを後悔していなければいいのだが…。
(風吹啓太)