サッカーのJ3リーグで首位を独走するのは大宮アルディージャだ。
昨季、22チーム中21位の成績でクラブ史上初のJ3降格の屈辱を味わったが、今季は第20節を終えた時点で、14勝2敗4分と圧倒的な強さを見せつけ、2位のアスルクラロ沼津に勝ち点12の差をつけている。
好調なチームの攻撃陣を引っ張るのは、ジュビロ磐田から期限付き移籍で加入した元日本代表のFW杉本健勇だ。
開幕戦から先発に起用されると、第6節のテゲバジャーロ宮崎戦で2ゴール。そこから「ケチャップドバドバ」とばかりにゴールネットを揺らし、現在は8得点で、得点ランキング4位タイと結果を残している。
早くもチームの「顔」になった杉本といえば、〝日本一アンチの多いフォワード〟としても、サッカーファンにはお馴染みだ。
セレッソ大阪の下部組織出身で、2010年にトップチーム昇格後、東京ヴェルディ、川崎フロンターレ、浦和レッズ、横浜F・マリノス、ジュビロ磐田とチームを渡り歩いた。
若手の頃から「規格外」と言われ、187センチの長身で空中戦にめっぽう強く、シュート精度の高さもウリ。
17年シーズンには、セレッソ大阪のエースとして君臨し、キャリアハイのリーグ戦で22得点を記録。日本代表にも初選出され、〝和製イブラヒモヴィッチ〟として期待を集めた。
ノリノリだった杉本は19年シーズンに国内ビッグクラブの浦和レッズに補強の目玉として移籍。年俸も1億円超えの大台に乗ったといわれていたが、ここから歯車がかみ合わなくなっていく。
「浦和時代は3シーズンで、リーグ戦70試合に出場して6ゴール。ピッチより私生活のほうが注目を浴びて、ド派手な高級車に乗る姿が話題になりましたね。自身のユーチューブではパテックフィリップの高級時計を購入する動画をアップして『サッカー選手は夢を与える存在』とテロップ付きで豪語していましたが、『プレーで夢を見せろ』とツッコまれていました」(サッカーライター)
空砲の高給取りのストライカーにアンチが急増すると、いじられキャラとして扱われるようになった。前出のサッカーライターが続ける。
「19年9月に会員制のSNSをスタートすることを発表しました。会員はオープンチャットでコミュニケーションを取れたり、オフ会に参加できる内容で、月額料金は2980円。割高な印象に批判が高まると、それから『ニーキュッパ』と、アンチに呼ばれるようになりました。ジュビロ磐田に移籍してもイジられキャラは変わらず、22年シーズンのスーパーゴール集の動画がユーチューブに投稿されたのですが、リーグ戦30試合に出場してPKの1ゴールのみ。なので、PKを蹴り込むシーンの7秒間で動画は終わります」
バロンドール(世界年間最優秀選手賞)の発表時期になれば、「候補入り」などと散々アンチのかっこうのネタにされてきたが、ついに、杉本は大宮で目を覚ましたのだ。
セレッソ大阪時代を彷彿させる暴れん坊ぶりも戻ってきたと、前出のサッカーライターは感嘆する。
「足元の技術のうまさは相変わらずですが、ポストプレーの起点になってタメを作るだけではなく、最前線からハードワークで走り続けて守備にも貢献しています。スタンドへ響き渡るくらい感情をむき出しにしながら大声で檄を飛ばし、ギラギラしている感じも伝わってきて、サポーターに愛されていますね」
大復活でアンチの声を吹き飛ばし、1年でのJ2昇格に向けてゴールショーを展開する杉本の活躍から目が離せない。
(風吹啓太)