今年のプロ野球で印象に残ったシーンを投手目線で語ったのは、野球解説者の江川卓氏だった。自身のYouTubeチャンネル〈江川卓のたかされ【江川卓 公式チャンネル】〉で取り上げたのは、9月22日にバンテリンドームで行われた中日×広島戦。中日のベテラン右腕・涌井秀章の「22球」を振り返った。
2-1と中日リードの6回表、広島の矢野雅哉が一死走者なしの場面で打席に立つと、涌井に22球も投げさせたあげく、四球を選んだ。「1打席の投球数22」は、プロ野球記録に。矢野はこの打席で17球、ファウルで粘っており「1打席17ファウル」も同じくプロ野球記録となった。矢野は諦めずに粘って粘って、涌井はさんざん粘られたあげく四球献上となったわけだが、江川氏は次のように涌井を評した。
「涌井さんのようにコントロールがいい人じゃないと、ありえない。だいたいボールになっちゃうから。フルカウントになって、例えば三振にしようとかアウトにしようって始まると、ピッチャーって力むから絶対、ボールになるんですよ。それをストライクゾーンにずっと投げられるというのは、よっぽど冷静なんですよ、ピッチャーが。涌井さんぐらいの年齢とキャリアがないとできないことですよね」
涌井は西武時代の2007と2009年、ロッテ時代の2015年、楽天時代の2020年に最多勝タイトルを獲得。3球団、さらに3つの年代(2000年代、2010年代、2020年代)での受賞は、史上初の快挙であった。
ちなみに、これまでの「1打席最多投球数」は「19」だ。1947年11月11日、打者・松井信勝(太陽)と投手・重松通雄(金星)のケース。次に2012年7月7日、打者・明石健志(ソフトバンク)に投手・乾真大(日本ハム)。そして2013年8月24日、打者・鶴岡一成に投手・山口鉄也(巨人)の3度あった。
(所ひで/ユーチューブライター)