DeNAの来日1年目左腕アンソニー・ケイの投球は、まさしく圧巻のひと言だった。ソフトバンクとの日本シリーズ第4戦で見せた快投には、ソフトバンク・ファンも唸るしかなかったのではないか。
初回、1番・柳田悠岐、2番・周東佑京、3番・栗原陵矢を連続三振に斬って取ると、2回には4番・山川穂高も空振り三振に仕留め、4者連続三振の好発進。その後もソフトバンク打線に得点を許さず、終わってみれば7回102球で被安打4、7奪三振、自責点0。日本シリーズ初登板初先発初勝利を飾った。日本シリーズで7回以上を投げて無失点だった外国人投手は2020年11月24日、ソフトバンク×巨人の第3戦、ソフトバンクのマット・ムーア以来だ。
この時のムーアは7回を無安打無失点に抑えて勝利投手になり、優秀選手に選出された。ソフトバンクの4年連続11度目の日本一に貢献した。まさかその4年後に、巨人と同じ屈辱を受けるとは…。
ケイとムーアはどちらも頼もしい助っ人だが、実は日本シリーズで7回どころか9回無失点を4回も記録した外国人投手がいるのをご存じだろうか。
1960年の来日1年目から南海ホークスの先発としてフル回転し、「赤鬼」の異名をとったジョー・スタンカだ。1961年の日本シリーズ第1戦では、巨人を相手に9回無失点の快投。許した出塁はわずか4(3安打1四球)で、いずれも併殺に仕留め、打者27人の完封劇だった。
さらにすごかったのは1964年、阪神との日本シリーズだ。スタンカは第1戦、第3戦、第6戦、第7戦で先発登板。第3戦は1回1/3で降板し、負け投手になっているが、他の3戦は全て9回無失点の完封勝利を挙げているのだ。とりわけ第7戦は、9回2安打99球で完封した第6戦の翌日登板であり、現代の野球ではとても信じられない快挙といえるだろう。
当時、南海でチームメイトだった大沢啓二は、スタンカをこう評している。
「俺の知ってる限りじゃ、日本野球に徹した最初の外国人選手だろうな。2メートル近い身長から投げ下ろすピッチングはすごい迫力だった」
日本シリーズ外国人投手の7回以上無失点は、2015年にソフトバンクのリック・バンデンハークも記録している。こうして過去の記録を振り返ってみると、奇しくもすべてホークスの選手だったというのは興味深い。
リーグ戦では自身の不甲斐なさやチームメイトのミスに、たびたびブチ切れていたケイ。それが日本シリーズで喜びの感情を爆発させる姿を見せ、ファンは安堵したのではないだろうか。
(ケン高田)