10月14日に脱線事故が発生してからすでに1カ月、千葉県のいすみ鉄道が危機的状況に陥っている。脱線の原因は木製の枕木が腐食し、レールがずれたことだった。事故発生直後は早期の運転再開を目指していたものの、10月28日には運転再開の見込みが立っていないと発表したのである。
運転再開が延期された理由は、修理が必要な場所が当初の想定よりも多かったことにある。これに「やはりそうか」と声を上げたのが、鉄道関係者だ。
「木製の枕木は傷みやすいので、運輸安全委員会はコンクリート製に交換するよう指導を行っていました。いすみ鉄道も10月中に交換作業をする予定でしたが、脱線事故はその直前に起きてしまった。つまり、いすみ鉄道の枕木は今も木製のまま。傷んでいる箇所は、脱線した地点の他にいくつもあったはずで、その点検と交換が終わらないと運転再開はできません。ですので、早期の運転再開は難しいと思っていました」
点検と修理の箇所が増えれば、それだけお金がかかる。運休が長引けば、収入減は続くのだ。いすみ鉄道は危機的状況に置かれている。
そしてこうした危機は、いすみ鉄道に限った話ではない。
「地方の私鉄には今も、木製の枕木が残っています。もちろんすぐにでもコンクリート製に交換したいのですが、経営難の地方私鉄にとって、その費用を捻出するのは簡単ではありません。かといって交換しないと、いすみ鉄道のように脱線事故が起き、しかも、それが長引くとになりかねない。木製の枕木は地方私鉄が生き残れるかどうか、存続を左右することになるかもしれません」(前出・鉄道関係者)
路線存続のために、沿線の地方自治体の協力がほしいところだが…。
(海野久泰)