千葉県内各地に大きな被害を与えた台風13号による記録的な大雨によって、いすみ鉄道にも土砂流出などの被害が出ている。
いすみ鉄道によると、大原駅と大多喜駅の間や大多喜駅と上総中野駅の間、複数の場所で土砂が流出し、一部では線路が宙に浮いた状態になっているという。
これにより全線で終日運休となっており、バスにより代行輸送を行っている。大原駅と大多喜駅間は13日に復旧予定だが、大多喜駅と上総中野駅の間は復旧の見通しは立っておらず、全線の運転再開まではかなりの時間がかかる見込みだ。
土砂流出による線路の浮きは大きな問題だと鉄道ライターは指摘する。
「11年の新潟・福島豪雨によって、JR只見線は小出駅と会津坂下駅の間で土砂流出や橋梁流出の大きな被害を受け、一時は廃止も噂されました。紆余曲折を経て全線で運転を再開したのは22年。復旧まで11年もかかったんです。またJR米坂線は昨年8月の豪雨で土砂崩れや土砂流出、鉄橋の倒壊など大きな被害を受け、今も萩生駅と越後大島駅の間は不通のまま。只見線と米坂線、どちらもすみやかな復旧を妨げたのは多額の復旧費用でした。米坂線は86億円が必要だとJR東日本は発表しています。いすみ鉄道はいくらかかるのか、もし多額になった場合どこが払うのか。問題は山積みです」
復旧せず廃線になった例もあるそうで、
「JR岩泉線は10年に土砂崩れによる脱線事故が起きると運休になり、12年には復旧を断念。バスによる輸送に切り替わりました。また九州のJR日田彦山線も豪雨による被害を受け、一部が復旧することなくバス高速輸送システム(BRT)になりました。いすみ鉄道はすでに代行バスでの輸送を行っているので、鉄道を廃止してバスに転換の可能性もないわけではありません」(前出・鉄道ライター)
いすみ鉄道と上総中野駅で接続する小湊鐵道も、豪雨で線路の土砂流入や倒木があり里見駅と上総中野駅の間で運休。里見駅と月崎駅の間は復旧まで1週間ほどだが、月崎駅と上総中野駅は復旧のめどがたたないという。いすみ鉄道と小湊鐵道の廃止という最悪のシナリオも浮上したのである。
「両路線は近年、観光路線として人気で、休みの日には多くの観光客が訪れています。東京からJR内房線で五井駅へ行き、そこから小湊鐵道に乗って上総中野駅でいすみ鉄道に乗り換え、大原駅でJR外房線に乗って帰ってくるというルート、もしくはその逆が人気です。いすみ鉄道と小湊鐵道は観光面から見ると2つで1つ。実際、相互乗り入れが検討されたこともありました。もしどちらか片方が廃止になれば観光客が減り、残った方も…というシナリオも考えられますね」(前出・鉄道ライター)
問題は復旧費用。千葉県には名路線を残すために奮発してほしいものだが…。
(海野久泰)