自民党は先の衆院選で、無所属で当選した萩生田光一元政調会長を自民党の衆院会派に入るよう要請し、萩生田氏も了承した。萩生田氏は、党の8段階の処分で2番目に重い離党勧告処分を受けた世耕弘成氏らと違って、6番目と軽い役職停止にすぎなかった。にもかかわらず、追加公認せずに会派入りにどどめた理由は何なのか。
党内では選挙戦終盤に、執行部が非公認とした候補者がいる支部にも他の候補と同様に、2000万円を支給していたことが、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」にスッパ抜かれ、大打撃をこうむった。支給にあたって主体的に動いたのが森山裕幹事長と事務方トップの元宿仁事務総長だったが、最終的な責任は総裁である石破茂総理にある。
自民党は11月7日に両院議員懇談会で今回の衆院選を総括するが、石破総理が出席議員から追及されるのは必至だ。その際、学生時代に「番長」で知られた萩生田氏が参加すれば、たとえ発言しなくても、威圧感がある。萩生田氏がニラミを利かせれば、旧安倍派に所属していた議員も発言しやすい。
そこで出ているのが、萩生田氏の存在感に石破総理ら執行部が恐れをなして、両院議員総会に出席できないようにした、との党内観測だ。追加公認したならば両院議員総会には出席できるが、会派入りならば代議士会にとどまり、両院議員総会への出席は認められないからだ。
石破総理は選挙前の10月9日の党首討論では「主権者たる国民が代表者としてふさわしいと判断した場合、公認することはある」と述べ、非公認とした候補が当選すれば追加公認する可能性を示していた。石破総理はまたもや前言を撤回した、との批判を浴びることになるが、それよりも萩生田氏と直接、対峙することを避けたようだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)