今年6月に北朝鮮の金正恩総書記とロシアのプーチン大統領の間で交わされた密約(包括的戦略パートナーシップ条約)を経て、金正恩がロシア経由でウクライナ戦線に、北朝鮮派兵部隊を次々と送り込んでいる。この部隊を取り巻く情勢が、風雲急を告げている。
最新の情勢分析によれば、すでに1部隊約3000人編成の計5部隊、合計約1万5000人の北朝鮮部隊が五月雨式に投入され、ロシア軍の指揮のもと、戦線に送り込まれているという。そんな中、衝撃的な情報が飛び込んできたのだ。
11月5日、ウクライナのルステム・ウメロフ国防相が公表したのは、
「ウクライナ軍が越境攻撃を続けているロシア西部のクルスク州において、ロシアに派遣された北朝鮮兵とウクライナ軍の間で、小規模な交戦が初めて行われた。北朝鮮兵の死者、生存者、捕虜がどれだけいるかは分析中だ」
ところが同日付の米紙ニューヨーク・タイムズは米当局者の話として「北朝鮮兵に相当な数の死者が出た」と報じたのだ。
それだけではない。この最初の交戦に先立ち、ウクライナの政府当局者は北朝鮮兵に向けた、以下のようなビラを空中からバラ撒いたと明かしている。
「死にたくなければ投降せよ。捕虜には3度の食事が提供される」
戦線に派兵された北朝鮮部隊には、どのような運命が待ち構えているのか。ウクライナ情勢に詳しい軍事専門家が指摘する。
「ウクライナ戦線に送り込まれた北朝鮮部隊には『暴風軍団』と呼ばれる北の特殊精鋭部隊が含まれている。いずれにせよ、独裁者プーチンは『北朝鮮兵はすべからく捨て駒』と考えており、北朝鮮兵がビラの呼びかけに応じて投降や脱走を試みたとしても、後方などにいるロシア兵によって射殺されることになる。結局は『去るも地獄、残るも地獄』の阿鼻叫喚の中、北朝鮮部隊は『全滅』させられることになる」
加えてロシアによる経済支援に目が眩んだ金正恩は今、前述した約1万5000人どころか、延べ10万人規模にも上る部隊の派兵を画策している、とも伝えられている。
プーチン同様、金正恩が残虐非道な独裁者と評されるゆえんである。
(石森巌)