今では伝説となった天才芸人・横山やすし(1996年1月21日没)にインタビューしたことがある。1985年のことだ。映画「ビッグマグナム 黒岩先生」に主演するということで、東映本社で話を聞くことになった。
やすしはタクシー運転手に侮辱的な発言をしてトラブルとなったり、酒に酔ったままテレビに出演して暴言を吐くなど、様々な問題行動が報じられていた。ただ、個人的には好きな芸人だったので、会えるのを楽しみにしていた。
インタビューでは映画の内容に触れつつ「見どころ」や「苦労したこと」など、まあ、よくある質問をしていた。やすしは最初、笑顔で応じていたが、突然キレた。そして「何聞いてんのや、ボケ!」「そんなん聞いてどうする!」「お前みたいのがいるから、マスコミはダメなんや!」と罵詈雑言を浴びせてきて、説教を始めた。まだまだ未熟だった筆者はどう対応していいか分からず、頭が真っ白になった。
一体、どこで地雷を踏んだのかが分からない。テンプレートのような通り一遍の質問にウンザリしたのか、よほど虫の居所が悪かったのか、あるいはマスコミへの不信感があったのか…。
説教は延々30分ほど続き、やすしは「ええかボケ、分かったか!」と捨てゼリフを吐いて帰って行った。呆然とする筆者に東映宣伝部の人間が「やすしさんはあなたのためを思って言ったんだよ」と慰めの言葉をかけてくれたが、受けた衝撃は大きかった。
ただ、その後、もう少し工夫した質問をすればよかった…と少し反省もした。この経験を生かし、インタビューする際にはどうしたらいい反応をしてくれるのか、質問内容を考えるようになったのは確かだ。
今でもこの時のことを思い出すが、あの「説教体験」は無駄ではなかった…と自分に言い聞かせている。
(升田幸一)