JRAの女性騎手で前年よりも成績が上がっているのは、デビュー2年目の小林美駒ただひとりだ。11月2日の福島3Rでサトノロンドン(10番人気)に騎乗し、逃げ切って今年19勝となった。この勝利で中央、地方を合わせた勝利数は30勝となり、GⅠ騎乗が可能になる通算31勝まであと1勝。年内にも達成可能だろう。
彼女は6月23日の函館12Rで落馬し、左肩を脱臼骨折。それまでに18勝を挙げて成長著しい姿を見せていただけに、競馬関係者のショックは大きかった。肩を痛めたため、復帰しても以前のような騎乗ができなくなるのではないか、と思った人もいたはずだ。現に先ごろ引退した藤田菜七子は、肩を痛めたことで成績が上がらなくなった。
そうした不安を復帰4戦目で吹き飛ばしてみせたのだから、本人だけでなく関係者もホッとしたに違いない。それも小林らしいキップのいい逃げを見せて勝ったのだから、嬉しさは大きかっただろう。
本人はレース後に「減量を生かすのが、自分の持ち味だと思っています」と語っていたが、それは成績を見るとよりハッキリする。
初年度は10勝で、そのうち5勝は逃げ切り。2年目は現時点で19勝で、そのうち9勝が逃げ切りと、4キロ減を生かして先手必勝で勝利を積み上げてきたのだ。
JRA通算29勝のうち、1番人気から3番人気馬で勝利したのは12勝。半分以上は人気薄馬で勝っている。馬券的な妙味のある騎手と言っていい。
所属は美浦・鈴木伸尋厩舎で、リーディング5位の横山武史もいる。折に触れて彼からアドバイスを受け、それが役に立っているのだと、彼女は語っている。兄弟子の背を追って研鑽の日々を送ってきたことが、今の成績に繋がっているようだ。
今週は福島で土曜に5鞍、日曜に3鞍。土曜6Rの3歳以上1勝クラス(芝1200メートル)に出走するニシノアヤカゼには、2走前の未勝利戦に騎乗して勝ってみせた。今回で3回目の騎乗となるが、手の内に入れているだけに、楽しみしかない。
日曜12R、3歳以上1勝クラス(ダート1150メートル)のルージュアズライトも、上位争い可能な期待馬だ。地方からの出戻り馬だが、出戻り初戦の前走は1番人気に推されて、15頭立ての6着。2番手からレースを進め、最後は一杯になってしまったが、スピードのあるところを見せた。今回は距離が450メートル縮まるので、もうひと踏ん張りが利きそうだ。斤量が56キロから52キロになるのも有利。ぜひ、狙ってみたい。
(兜志郎/競馬ライター)