美浦所属では藤田菜七子以来7年ぶり、競馬界に新たに誕生した女性ルーキー・小林美駒が、いきなり魅せた。
騎手デビュー2戦目となった3月4日の中山12R(4歳上2勝クラス、ダート1800メートル)で5番人気のクリーンドリーム(牡5)に騎乗すると、好スタートから終始4、5番手を追走。最後の直線では先頭に立ち、ルメール、横山和生と叩き合いの大接戦を演じたのだ。スポーツ紙記者が振り返る。
「惜しくもクビ、ハナ差の3着に敗れましたが、初日から存在感をアピールしましたね。本人も『最後は私の腕のなさで、申し訳ないです』と、かなり悔しがっていました」
土・日で6鞍に騎乗した小林はこの時の3着が最高着順だったが、関係者を唸らせたのが、翌5日に15頭立てで行われた中山8R(4歳上2勝クラス、芝1600メートル)だった。13番人気のラキャラントシス(牝6)で果敢に逃げ、3着馬とタイム差なしの5着に粘ってみせたのだ。この騎乗を見た美浦トレセン関係者は「今後が楽しみでしかたない」と前置きして、こう続ける。
「初めての芝のレースで、しかもあのアンカツさん(安藤勝己元騎手)でさえ苦手と話していた、中山のマイル戦ですよ。いくら4キロ減の恩恵があるとはいえ、スタートがうまくてペース配分も絶妙。追ってから馬をフラつかせることもなく、真っすぐ走らせている。初勝利は近いんじゃないかな」
JRA競馬学校を卒業した女性騎手の最速勝利記録は、デビュー9戦目の西原玲奈元騎手で、2位タイが古川奈穂と永島まなみの12戦目。昨年ブレイクした今村聖奈は17戦目、藤田菜七子の初勝利は4月第2週の51戦目だった。
「小林は新潟県出身で、3歳頃から新潟競馬場でポニーに乗っていました。『新潟競馬場乗馬スポーツ少年団』に所属して毎日のように新潟競馬場の乗馬センターに通い、中学2年生の時には全国の騎手強化選手に選ばれたように、騎乗技術は確か。118人が受験して合格者8人という競馬学校の狭き門を突破したのも、大いにうなずけます。しかも競馬学校1年目は聖奈と同厩舎でしたから、いろいろと学ぶところは多かったのではないでしょうか」(前出・スポーツ紙記者)
所属が鈴木伸尋厩舎に決まったのも大きいという。
「2年連続で関東リーディングに輝いた兄弟子の横山武史が、熱心に指導していますね。レース映像を一緒に見ながらアドバイスを送り、同じトレーニングもこなしていて、武史と同じエージェントがついている。そういう意味では、菜七子がデビューした頃とは全く違うんですよ。菜七子の1年目は6勝止まりだったけど、はるかに活躍しても何の不思議もない」(前出・美浦トレセン関係者)
騎手になって「どうしても乗りたいレースが、新潟直線1000メートルです」とニッコリ笑う小林。次の新潟開催は4月の最終週だ。千直の女王・藤田との直接対決が、今から楽しみなのである。