スポーツ

二宮清純の「“平成・令和”スポーツ名勝負」〈NY、凡ミス連発で“最悪の1日”〉

ヤンキース VS ドジャース」ワールドシリーズ第5戦・2024年10月30日

 相撲にたとえるなら、ワールドシリーズでのニューヨーク・ヤンキースとロサンゼルス・ドジャースの頂上決戦は、千秋楽での東西両横綱の激突だ。

 2023年までの対戦戦績はヤンキースの8勝3敗。ドジャースは1958年に西海岸に移転するまで、ニューヨークのブルックリン地区を本拠にしており、言わば、その時からの宿敵だ。

 12回目の頂上決戦は、別の意味でも注目を集めた。アーロン・ジャッジ(ヤンキース)58本塁打、大谷翔平( ドジャース)54本塁打。50本塁打以上の選手が対決するのは、ワールドシリーズ史上初だった。

 ドジャースが3勝1敗と王手をかけて迎えた第5戦は10月30日(日本時間31日)、ヤンキースタジアムで行なわれた。

 第2戦で二盗を企図した際に左肩を脱臼した大谷は、痛みをこらえて1番DHでスタメン出場した。

 もう後のないヤンキースは、序盤から攻勢に出た。1回表ドジャースの先発ジャック・フラーティから、このシリーズ不発だった3番ジャッジが、先制2ラン。さらには4番ジャズ・チザムもソロアーチを架け、いきなり3対0。

 勢いに乗るヤンキースは2回表に9番アレックス・バードゥーゴのタイムリー、3回表には5番のジアンカルロ・スタントンの1発が飛び出し、5対0とした。

 この時点で誰がドジャースの逆転勝ちを予想しただろう。ヤンキースのゲリット・コールはノーヒットピッチングを続けていた。

 ところが5回表、信じられないようなことが起こる。まずはこの回先頭のキケ・ヘルナンデスがチーム初ヒット。続く7番トミー・エドマンの打球はセンターへ。平凡なラインドライブに見えたが、これをジャッジがグラブにあて、ポトリと落としてしまったのだ。おそらく1000回のうち1回あるかないかの凡ミスだ。

 ミスは連鎖する。8番ウィル・スミスのゴロを、ショートのアンソニー・ボルペが三塁へ悪送球。これで無死満塁。だが、ここでサイ・ヤング賞投手(23年)が踏ん張る。9番ギャビン・ラックス、1番大谷を連続三振に切って取るのだ。コールが最も警戒していた大谷を封じたことで、ドジャースはチャンスを逸したかに思われた。

 続く2番ムーキー・ベッツの打球は平凡な一塁ゴロ。アンソニー・リゾがさばき、トスしようとしたところ、ベースカバーに入っていなければならないはずのコールがいないのだ。ジャッジの落球が1000回に1回なら、コールの怠慢プレーは100回に1回あるかないかのボーンヘッドだ。

 もっともコールにも同情すべき点はある。味方に2回も足を引っ張られながらも、踏ん張って2つの三振を奪い、ベッツも打ち取った‥‥とホッとしたところに魔が忍び寄った。

 自らのボーンヘッドで1点を失ったコールは、3番フレディ・フリーマン、4番テオスカー・ヘルナンデスに連続タイムリーを浴び、この回5点を失った。3本のホームランを、3つのミスが帳消しにした。

 終わってみればドジャースの7対6。ヤンキースの専門サイトは、コールのボーンヘッドを「(一塁ベースカバーは)リトルリーグ時代からやってきた基本中の基本だ」と批判した。ヤンキースは宿敵に敗れ、ニューヨークにとっては〝最悪の1日〞となった。

二宮清純(にのみや・せいじゅん)1960年、愛媛県生まれ。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。最新刊に「森保一の決める技法」。

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