キティちゃんに並ぶサンリオの顔、シナモロールの「生みの親」奥村心雪氏がサンリオを退職することが明らかになった。サンリオ広報が11月11日付で明らかにした。
同社執行役員の奥村氏本人も、自身のインスタグラムで発表。インスタには白い子犬のシナモロールとは対照的な、奥村氏オリジナルの黒白の猫キャラクターや黒い犬が登場し、来年から作家活動を始めるという。シナモロールのキャラクター展開は、奥村氏と共同制作を続けてきたチームに継承される。
サンリオは新型コロナの影響で、2021年3月期に33億円の営業赤字に陥ってから、7期連続で減収減益だったが、2024年3月期で前期比103.5%増の269億円の営業利益を出したばかり。「サンリオキャラクター大賞2024」で5年連続人気投票1位のシナモロールの作者がこのタイミングで退職するのは意外だが、キャラクターのライセンス事業で安定した営業利益を叩き出す優良企業には「別の顔」がある。
サンリオは過去に、国と官僚に戦いを挑んだ「サンリオの乱」を起こした武闘派企業だ。「老人は毎日、病院に通ってもタダ」「老人は湿布をタダでもらい放題」というデタラメな老人医療無償化制度を終わらせた「功労者」なのだ。
小渕恵三第一次改造内閣の1999年5月、サンリオ健保組合は老人医療への拠出金負担を前年度から4割も増やされ、健保組合財政が赤字に転落。「老人医療への拠出金は行政の無能を健康保健組合に転化し、財産権を侵害するものだ」と厚労省に不服審査請求を出し、国から一方的に支払いを求められた老人医療への赤字補填(拠出金)の一部支払いを拒否した。
国民健康保険制度と違い、サラリーマンの社会保険制度は、組合員が急病や事故で働けなくなった時に備えて組合員がお金を出し合う、サラリーマンの暮らしを守る「相互扶助」制度だ。組合員が払った健康保険料で黒字財政を維持してきたのに、全国の市町村によるメチャクチャな高齢者バラマキを尻拭い、組合員に無関係な老人の医療費を肩代わりさせられて赤字財政に転落したのだから、サンリオの健康保険組合が不服審査請求するのは当然の権利といえる。
ところが厚労省は、この審査請求を却下。これに大企業など1800社の健康保険組合が加入する健康保健組合連合会(健保連)が怒り、同年7月分の老人保健への供出金支払いを凍結する実力行使に出た。正規、非正規を問わず、サラリーマンが払っている健康保険料の30%から40%は老人医療の赤字分に補填されており、この赤字補填を拒否できるなら、我々の手取り収入はその分、増えるのだ。
この実力行使に厚労省側が折れて、70歳以上の高齢者が医療機関を受診した際に医療費の1割を自己負担する「健康保険法」が、2002年に改正された。さらに2022年10月からは、一定以上の所得のある75歳以上の老人の医療費負担は1割から2割に引き上げられたが、この制度改革に最後まで反対した「抵抗勢力」こそが、自民党に毎年5億円超の政治献金をしている日本医師会だ。
年間600万円以上の年金受給で優雅な隠居生活を送る75歳以上の年金受給者は今も、病院窓口でたった2割しか自己負担しない一方、年収300万円のサラリーマンや派遣社員は3割負担。さらに給料の額面1割を老人医療費の赤字補填に巻き上げられている「世代間搾取」「世代間不公平」「弱者いじめ」は相変わらず続いている。
11月13日付の本サイトで書いたように、厚労省はさらにアルバイト学生からパート主婦まで、全ての労働者から老人医療の赤字分を強制徴収し、老人医療特権で日本の医者と自民党議員、天下り官僚だけがウハウハに肥え太る「106万円の壁」撤廃法案の準備に入っている。
こんな自民党だから、今回の衆院選で少数与党に転落し、国民民主党が議席数を28に伸ばした。国民民主党が狙う本丸は「103万円の壁撤廃」に続く「106万円の壁改革」。30年間も据え置きになっている103万円の税制控除額を178万円まで引き上げたところで、中小企業やパート主婦やアルバイト学生にまで老人医療の赤字分を肩代わりさせる「106万円の壁撤廃」を阻止しなければ、スーパーやバス会社、タクシー会社といった地方の中小企業は倒産ラッシュ、我々の暮らしはシャレにならないほど苦しくなる。
「103万円の壁撤廃」で所得税、住民税が7兆円減収して地方財政に打撃があるというならば、まず国家公務員の社会保険料率を中小企業と同じ10%に引き上げ、ボロ儲けしすぎの開業医が持つ「医療法人の税制優遇」と「必要経費は青天井」という上級国民特権を廃止し、日本医師会と高齢者に、自らが作り出した老人医療赤字9兆円を負担させればいい。
もし亡国官僚と石破内閣が「106万円の壁」撤廃の大増税を強行し、不倫スキャンダルが出た国民民主党・玉木代表の剣先が鈍るようなら、サンリオ労働組合キャラクターでもあるキティちゃんが再び、国と戦う白豹に変身する日は近いかもしれない。
(那須優子/医療ジャーナリスト)