元衆院議員の宮崎謙介氏が足掛け5年の議員生活の経験をもとに、政治家ウオッチングやオフレコ話、政治にまつわる話を適度な塩梅で、わかりやすく「濃口政治評論家」として直言!
親の新型コロナワクチン接種の予約をするため一家総出で、なんなら親戚まで使って電話をかけまくっている、という話をよく耳にします。とある先輩は、
「渡辺美里のコンサートチケットを思い出しちゃったよ。チケットぴあに電話かけまくってさぁ」
今やライブ系はネットで簡単予約できます。ワクチンだってスムーズに予約できるよう段取りしてほしいのに、ガラケーを通り越して「イエ電」。固定電話のほうがつながりやすいという噂まで飛び交い、高齢者本人が近くの公衆電話を探し回るというのですから、虐待としか言いようがありません。
全ての高齢者のワクチンについて、7月末までに2回接種を完了すると宣言した政府。ダイジョブ? GW明けからは毎週1000万本のワクチンが入ってくると発表したものの、明けてだいぶ経つのに連日、ワクチン問題で大騒ぎ。イギリスやアメリカでは既に接種目標は達成寸前で、本格的な経済活動が始まろうとしています。日本に至っては、東京五輪をムリヤリにでも遂行しようとしているのに、最優先だった医療従事者への接種すら完了していません。ワクチン接種が迅速であれば五輪反対の声も少しは和らぐというもの。釈然としない中で当然、政府も焦っているようです。
というのは、去るGW連休の中日、自民党の各派閥の事務総長会議が設けられ、その後、幹事長室から議員たちに召集がかかりました。そこでは総理官邸から、こんな通達が。
「ワクチンの確保は大体できた。スケジュールも提示している。それなのに接種が遅れているとは何事だ。人手なのか、場所なのか、ワクチンの数なのか。今一度、派閥員は地元を洗って、各自治体で接種の状況がどうなっているかの調査レポートを提出すべし」
派閥ごとに号令をかけるなど珍しいことですが、自治体との連携には地元議員が適任だということ。その上で派閥同士を競わせて成果をあげよう、という魂胆だったのかもしれません。
結果、浮かび上がった2自治体の事例が、オペレーション改善の決め手になる可能性が。ひとつは、打ち手の問題で、
「場所やワクチンの数より、とにかく打ち手が足りません。なんたって医師会からは、町クリニックから常駐医師を外に出すことはできない、と止められていて」
ということ。つまり、医師会のせいで町医者や看護師が動員できない、という主張です。
片や、予定よりも早く高齢者に打ち終わりそうな自治体も。こちらは住居の街区ごとに日時を決め打ちするやり方。事前の電話やネット予約はなく、指定日に直接来てもらう方法ですが、高齢者には最も合うオペレーションかもしれません。
くしくもこの6月末にチケットぴあの店舗運営が全て幕を閉じる、と知りました。もうすぐ大規模接種会場の予約も始まるわけですよね。これも電話とネットで予約、しかも予約数を制限するってまた‥‥。いっそのこと閉店するチケットぴあに、ワクチンぴあとして手伝ってもらってはどうなのか。派閥の成果争いで自治体の課題が浮き彫りになった今、次なる「打つ手」を早く決めないと‥‥。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ):1981年生まれ、東京出身。早稲田大学を卒業後、日本生命などを経て、12年に衆議院議員に。16年に辞職し、経営コンサルタントや「サンデー・ジャポン」(TBS系)などに出演。「バラいろダンディ」(TOKYO MX)ではレギュラーMCを務める。