野党にとって支持率が10%以上になるのは、容易なことではない。ましてや少数政党だった国民民主党にとっては「高い壁」だった。それが日本経済新聞社とテレビ東京が11月15から17日に行った世論調査で、10月と比べて10ポイントも上昇して11%となり、同党が唱える「103万円の壁」よりもひと足早く「壁」を突破したのだ。
支持率が10%を超えるのは2020年9月の結党以降、初めてのことで、自民党(30%)、立憲民主党(16%)に次いで第3位となった。勢いに乗りたいところだが、これに立ちはだかるのが、11月24日投開票の名古屋市長選である。
名古屋市長選では国民民主党所属の参院議員だった大塚耕平氏が、作家の百田尚樹氏が代表の日本保守党推薦で前副市長の広沢一郎氏との大激戦を展開している。報道各社は「横一線の戦い」(読売新聞)、「広沢氏が一歩リードし、大塚氏が激しく追う展開」(朝日新聞)などと報じている。
国民民主党の前身、民社党は春日一幸元委員長や塚本三郎元委員長らを輩出した、名古屋では固い地盤を持っていた。最近ではトヨタ労組が強い影響力を発揮している。
本来ならば、トヨタ労組などの支持を得ている大塚氏が、盤石の戦いを展開するはずだった。そこに対抗馬として現れたのが、衆院に転出した河村たかし前名古屋市長の後継となる広沢氏である。
広沢氏は河村氏を引き継いで市民税減税を打ち出したほか、ユニークなところでは、市内の東山動物園のコアラを抱っこできるように、コモドドラゴンを増やして繁殖可能に、なども公約として掲げている。
奇抜なアイデアの広沢氏の公約は市民に関心を持たれており、労組から支援を受けてオーソドックスな戦いを展開する大塚氏は、予想外に厳しい戦いを強いられている。
大塚氏がトヨタ労組などの底力を発揮して勝つのか。名古屋市長選の行方は、国民民主党の党勢にも影響を与えることになりそうだ。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)