社会

医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<中年太り>ラットで仕組みを解明。原因は神経細胞の変化!?

 最近、飲みすぎでビール腹が気になって─。加齢に伴って、基礎代謝機能の低下で太りやすくなってしまう「中年太り」。高血圧や糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病につながる可能性も高くなるため注意が必要だ。

 これまで「中年太り」のメカニズムは明らかにされていなかったが、3月に名古屋大学大学院の研究グループが、ラットを使った実験でその仕組みを解明したと発表した。

 研究グループは、ラットの脳に注目。脳の一部分にある神経細胞には脂肪が蓄積するにつれて「太ってきている」という情報を受け取る「MC4R」と呼ばれるタンパク質が存在し、これが代謝を促したり、食べる量を減らしたりする指令を出しているという。これが、どのように変化するかを調べたところ、このタンパク質の「一次繊毛」と呼ばれるアンテナのような部分が加齢によって縮んでいくことが明らかにされた。さらに、実験では、カロリーの高い餌を食べたラットのアンテナが縮んだという。

 つまり、加齢によって脳の神経細胞のアンテナが縮み、代謝の指令が出しにくくなるため、それが「中年太り」の原因ではないかというのである。

 では、代謝を促し、過剰にカロリーを摂取しないためにはどうすればよいのか。次の3つを心がけてほしい。まず、満腹中枢をうまく制御するため、ゆっくり食べて、食事の量をコントロールすること。穀物や芋類、甘いものをなるべく控えて、糖分の量を減らすこと。さらに、就寝前には食事や間食を控えること。これは、食べ物が胃の中に残ったまま就寝すると燃焼できないため、そのまま脂肪として体内に蓄えられてしまうからだ。中年太りの対策は、まずは日頃の食生活の見直しから始めてみよう。

田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。

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