晩秋の夜空を焼くような業火だった。11月27日夜、NHK「ニュース9」やテレビ朝日「報道ステーション」の視聴者は、東京ドームにほど近い高級住宅街の6階建てマンションからのぼる炎の勢いに戦慄したことだろう。
しかも火元は猪口邦子参院議員宅であり、2人の犠牲者が確認されている。出火当時、猪口議員は永田町におり、二女も仕事中で無事だったが、猪口議員の夫で東大名誉教授の孝氏と30代の長女とは連絡が取れておらず、警視庁は遺体の身元確認を慎重に進めている。
出火当時はJRと東京メトロの飯田橋駅から御茶ノ水駅、後楽園や春日、神楽坂一帯に30台を超える緊急車両が集まり、あたりは騒然となった。「屋上に逃げ遅れた人がいる」という近所の住民の助けを求める声が、さらに現場の緊迫感を増した。全国紙政治部デスクが説明する。
「猪口邸から出火し、逃げ遅れた人がいるようだと聞いて、政治部と社会部の内勤記者はざわつきました。猪口議員が障害を抱えたお嬢さんを育てていることは、永田町では公然の秘密だったからです。どうかお嬢さんが無事であってほしいと、祈るように中継映像を見ていました」
そんな猪口一家にかつて、国会で「暴言」を吐いた人物がいる。立憲民主党の元参院議員、蓮舫氏だ。
その発言は2006年3月24日の「第164回国会 予算委員会」発言録に残っている。当時、猪口氏は小泉純一郎内閣で少子化担当大臣だった。
蓮舫「障害を持つお子さんを育てている保護者の最大の悩み、考えるとつらいのは、自分が死んだ後、子供は生活していけるのか、もっと言えば生きていけるんだろうか、こういう不安の声にこたえたのが障害者扶養共済制度なんです。猪口大臣はこの制度を御存じでしたでしょうか。障害児も大切な命と考えるとこの制度をどのように思われるか、併せてお知らせください」
猪口「この制度を私が知っていたかということでございますか。この質問が来るまでにもちろん当然勉強してきております。そして、これが重要であるというふうに認識しております」
蓮舫「この質問の通告をしなければ知らなかったと理解をさせていただきます」
蓮舫氏は30年以上も障害者を育て、今回の火事に見舞われた猪口議員への暴言をどう考えているのか。
東京都知事選や衆院選、兵庫県知事の出直し選挙や名古屋市長選に吹いた「風」は、有権者がSNSに踊らされたわけではない。野党ならばどんな振る舞いも許されると勘違いしている政治家と既存の野党に、ほとほと嫌気がさしているだけだ。
(那須優子)