楽天を退団した田中将大をめぐる各球団の「獲得調査」においては、様々な情報が乱れ飛んでいる。
ヤクルトはソフトバンクからFAとなった石川柊太の獲得を最優先としつつ、「不測の事態」が発生した際には田中へとシフトチェンジするとされる。力の入れ具合、重要度は微妙だ。
菅野智之がメジャー移籍を目指す阿部巨人も興味を示していたというが、その後、具体的な動きは伝えられていない。あるいは中日も広いバンテリンドームで田中の投球術が生きるとして、獲得球団の候補に挙がっているものの、実情は不透明だ。
ソフトバンクの三笠杉彦GMはメディアの質問に、
「獲得する可能性は高くないかなと思います」
として、消極的な姿勢を表明。阪神も当初から、獲得には乗り出さないとしている。
今後の展開は予断を許さないが、田中が考えを改めて、楽天が提示した減額制限を越える大幅ダウンを受け入れるのならともかく、このままでは「在籍球団ナシ」で「現役引退」なんてことにもなりかねない。そんな中、
「ニューヨークでも田中の楽天退団と、新天地を探していることが報じられました」(現地メディア関係者)
理由はいくつかある。田中がヤンキースでの7年間で、通算78勝46敗と活躍した。さらに今年のワールドシリーズでヤンキースが敗れ、通算防御率1.32という田中のポストシーズンマッチにおける圧倒的な強さが再クローズアップされた直後だった。
もっとも、だからといって「ヤンキース復帰」の話にはつながらないが、こんな声も聞かれたのだ。
「仮に日本で移籍先が見つからなかったら、メジャーリーグ球団のどこかが、来春キャンプの招待選手としての参加を打診するかもしれません。可能性としてはヤンキースが高いと思います」(前出・現地メディア関係者)
だとしても「招待選手で結果を出して契約」という復活ストーリーにはならないようだ。一時代を築いたスター選手に対し、メジャーリーグではデビューを果たした球団が「最後の晴れ舞台」を用意するのが慣例。イチローもそうだった。2017年にマーリンズを解雇され、新年を迎えても契約先が見つからず、1月半ばになってオファーを出したのは、メジャーデビューしたマリナーズだった。
2018年シーズンは故障などもあり、5月には「スペシャルアシスタントアドバイザー」に就任。同年は選手として残り試合に出ないことも、同時発表された。翌2019年1月、改めてマリナーズとマイナー契約を結び直して、日本での開幕2連戦で引退セレモニーを迎えている。
「田中に招待選手の打診があるかもしれない」と言われているのは、ヤンキースによるそんな「引退ロード」が予想されているからだ。
田中自身は「まだやれる」と思っている。できればパ・リーグの球団で、楽天相手に復活勝利を挙げてもらいたいが…。
「来春キャンプでの招待選手」の選択肢は消えていないのである。
(飯山満/スポーツライター)