アメリカ有料スポーツ専門ニュースサイト「ジ・アスレチック」が11月28日に報じたところによれば、大谷翔平が元通訳の水原一平被告に対し、押収された「野球カード」の所有権を主張して裁判を起こした。
水原被告が違法なスポーツ賭博での負け金を大谷の口座から不正送金し、逮捕されたのは周知の通り。横領の総額約1700万ドルは日本円にして約25億円で、その中には約5000万円分の野球カードの購入代金が含まれていた。メジャーリーグを取材するジャーナリストが解説する。
「押収されたのは全て、大谷のカードでした。愛情による購入ではなく、将来的に価格が高騰することを見込んでの投資目的。いわば、転売するためでした。確かに大谷の今季の活躍を考えれば、水原被告が買った時期の何倍にもなっていてもおかしくないですからね」
たかが野球選手のカードと、侮るわけにはいかない。日米で複数社から販売されており、レアカードはもはやひと財産となりうる。少年時代に集めた人は多いであろう、プロ野球チップスのオマケについているカードですら、高ければ数万円の値が付くという。市場規模の大きいメジャー選手のカードともなれば、さらに高額に跳ね上がる。近年は水原被告と同様に、投資目的で取引されることが珍しくないのだ。
市場があるということは、当然ながら愛好家も多い。2023年には、サッカーフランス代表の「10番」である超有名選手グリーズマンが自身のSNSに、動画とともにこんな投稿をした。
〈大谷のサイン入り野球カードを引き当てて、感動のあまり絶句する〉
これが世界的に大バズりした。
「サイン入りカードはその図柄の中でも世界に1枚しかない、超レアもの。ファンならたまらないお宝ですし、市場価値は高くなります。大谷に関して言えばつい先日も、ルーキー時代のカードが日本円にして約8100万円で取り引きされました」(前出・ジャーナリスト)
野球カードをめぐっては2022年8月5日、史上最高の遊撃手と謳われたホーナス・ワグナーのカードが、史上最高額の9億7000万円で落札された。たった1枚のカードに約10億円の価値があるとは、と驚かれたものだ。
だが、それもつかの間、同月末にはスイッチヒッター初の三冠王となった往年の名選手、ミッキー・マントルのカードが、スポーツ関連以外のジャンルも含むトレーディングカードでも最高値となる、約18億9000万円で落札。たった1カ月間で10億円近くも最高額を更新するという事態が起きている。
大谷のカードも数十年後には、それくらいの値段がついていてもおかしくない。水原被告が売り払う前に、当局が押収できたのは僥倖であり、大谷が所有権を主張するのも無理からぬことなのだ。