メジャーリーグでも「同じような悲劇」が起きていた。現地時間12月1日、米メディア「FANSIDED」がメジャーリーグ30球団のオフの補強状況をレポートした。興味深かったのが、ヤンキースについてのものだ。ポスティングシステムを使ってメジャーリーグに挑戦する佐々木朗希の動向にも触れられていたが、ズバリ、〈ヤンキースは佐々木側の希望リストから完全に外された〉と書かれていたのだ。
「かつてはゴジラ松井、田中将大ら日本人スタープレーヤーが在籍していましたが、『西海岸が主流になっている』と指摘されていました。そのことは他のスポーツメディアも何度か報じています」(現地記者)
佐々木がヤンキースを避ける明確な理由はわからない。単なる偶然かもしれないが、大谷翔平と山本由伸はドジャースを選び、昨年オフに渡米した松井裕樹も西海岸のパドレスを選択している。「FANSIDED」は〈結局、最後にモノを言うのはカネと名誉だ〉と皮肉っていたが、こうも指摘している。
〈佐々木の希望球団に、レッドソックスも浮上してきた。地区3位のレッドソックスに入ったら、同地区優勝チームはなぜ有力と見なされなかったのかを検討しなければならない〉
ヤンキースとレッドソックスは同じア・リーグ東地区で覇権を争ってきた。もっと言えば、日本の巨人と阪神のような「伝統的なライバルチーム同士」だ。
「要するにヤンキースはワールドシリーズまで勝ち上がったのに、佐々木にフラレた、という揶揄なんです。だけど、近年の米フリーエージェント市場では、大物選手がヤンキースと交渉しても、他の球団に行くパターンが増えてきました」(前出・現地記者)
近年、巨人が交渉に失敗した大物は、楽天からFA宣言した美馬学を筆頭に、現楽天の鈴木大地、オリックス入りした森友哉、日本ハムを選択した山崎福也、2024年シーズン途中に日本球界に帰還した筒香嘉智…。巨人も4年ぶりのリーグ優勝を果たした超人気球団である。日米の伝統球団が揃って不人気になった理由はナゾだが、こんな共通点がある。
「提示する金額、契約年数では常に他球団を上回っています」(スポーツ紙記者)
「FANSIDED」が指摘しているのは、ヤンキース・ブランドの失墜。もっとも、巨人については、
「今オフの重大案件は、カイル・ケラーの残留でした。メジャーリーグのどこかの球団がアタックしていたらしく、その慰留に必死でした。後半戦、勝ちパターンで投げてくれた彼がいなくなったら、大打撃でしたね」(球団関係者)
ヤンキースはといえば、アーロン・ジャッジに並ぶ二枚看板、ホアン・ソトの慰留に奔走している。はたして慰留は成功するだろうか。
日米ともにFA戦線では、伝統球団名とそのブランド力が通用しなくなってきた。
(飯山満/スポーツライター)