第2次石破内閣が少数与党政権となり、永田町の主役に躍り出たのが国民民主党の玉木雄一郎氏だ。選挙で誓った「103万円の壁」の引き上げを実現し、国民の手取りを増やしてほしいが、増税を最優先ミッションとする財務省が黙っていない。水面下で仕掛ける洗脳工作と増税プロパガンダの実態に迫る。
「今般の経済対策におきましては、自由民主党、公明党、国民民主党の3党間の合意を踏まえ、いわゆる103万円の壁については、令和7年度(25年度)税制改正の中で議論し、引き上げる」
12月2日、衆議院本会議で石破茂総理(67)は、「年収103万円の壁」の引き上げを明言した。95年以降、およそ30年間にわたって据え置かれた年収の壁がついに動こうとしている。
103万円の壁の撤廃の立役者は、国民民主党の玉木雄一郎代表(55)=役職停止中=だ。
10月の衆院選挙では「手取りを増やす」をキャッチフレーズに、年収の壁を「178万円」に引き上げると声高に主張した。
返す刀で74年に暫定税率が導入されてから続くガソリン税も取り上げて「ゾンビ税制」と批判を展開。消費税減税を訴える声も有権者に響き、公示前の7議席から4倍増となる28議席に大躍進した。
政治ジャーナリストの山村明義氏が解説する。
「自民・公明の与党が過半数割れしたことで、玉木氏がキャスティングボートを握ったのは間違いなく、野党である国民民主党の協力なしには国会運営が進みません。自公政権は政策協議の主導権を奪われる形になり、永田町では『玉木石破内閣』などと揶揄されています。総理の弱腰の姿勢を見かねた側近が、『もっと石破総理らしさを出してください』と進言しても耳を貸さない。党内野党からいきなり主流派になり、自分が仕切らなければならなくなったことで、かなり混乱している様子が見受けられます」
そもそも国民民主党が撤廃を主張する103万円の壁とは何か。現行の税制度では、年収が103万円(基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計)を超えない限り、所得税は課税されない。主婦のパートや学生アルバイトといった被扶養者が、この壁を懸念して「働き控え」を行うのは、自身の税負担だけでなく、扶養控除を受けてきた夫や親の税負担が増えてしまうからだ。なお、この103万円という額は憲法25条の生存権、つまり必要最低限の生活を送るための収入には課税しないという考えに基づき、同党が主張する178万円は、95年からの賃金上昇率1.73倍から算出されたものだ。
経済ジャーナリストの荻原博子氏も、壁の引き上げには歓迎ムード。
「控除が増えれば、手取りが増えるということ。そのぶん税金を払わなくていいので、我々納税者にはメリットしかありません」
税の控除額が178万円まで引き上げられれば、前述した働き控えや人手不足の解消が期待されるが、所得税の対象額が減るのだから、会社員だけでなく、個人事業主も減税の恩恵を受ける。
玉木氏によれば、年収500万円の会社員の場合、減税効果は13.2万円。それだけ手取りが増えれば、個人消費が伸びて景気が上向き、結果的に税収増につながると見ている。