社会

【切実解説】いま話題の「103万円の壁」が撤廃されたら庶民にどんな影響が及ぶのか

 もっと働きたいのに「働き控え」しないと――。

 アルバイトの学生や人手不足の中小企業を長らく悩ませてきた「103万円の壁」を壊すのに、何が問題なのか。衆院選挙で過半数割れし、大敗した自民党と国民民主党の「政策協議」が大詰めを迎えている。

 選挙で議席数を28まで伸ばした国民民主党の玉木雄一郎代表は自民党に対し、次のように要求している。

「閣僚ポストはいらない。国民民主党の選挙公約である所得税の基礎控除等を、現状の103万円(基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計)を178万円に引き上げる減税案のを受け入れてほしい」

「103万円の壁」は、働けば働くほど手取りが減る税制制度のシステムエラーだ。学生や主婦が家計を助けるために働いても、年収103万円を超えると自らに課税されるだけでなく、親や夫など扶養者の所得税・住民税も増税され、収入の10%以上を納税せねばならなくなる。

 この「減税案」が実現したら、我々にどんな影響があるのか。玉木代表のSNS公式アカウントの試算によると「103万円の壁」を178万円に引き上げることで、「年収200万円の人は8.6万円」「年収600万円の人は15.2万円」「年収800万円の人は22.8万円」の減税(所得税、住民税の総額)が見込めるとしている。

 年収800万円台の育児世帯(高校生の子供1人)では、親のほかに子供のアルバイト代を含めて31万円の減税効果が見込める。月額1万円の児童手当をもらったところで、年収の額面の3割から4割は増税分と社会保険料に奪われ、さらに年収800万円世帯は高校授業料無償化の所得制限に引っかかり、高校無償化の恩恵を受けられない。育児世帯にとって「103万円の壁撤廃」の方がありがたいのは、言うまでもないだろう。

 さらに夫の扶養に入っているパート主婦には「130万円の壁」も存在する。年収130万円を超えると夫の扶養から外れて年金や健康保険料などの社会保険料を支払わねばならず、額面で130万円をもらうはずが、手取りが100万円に減収してしまう。政府やテレビのコメンテーターは「それでも社会保険料を納めておいた方がいい」とうそぶくが、厚労省の試算では1960年が「損益分岐点」。1960年以降に生まれた60代以下は、納めた年金掛け金よりも、老後に受け取れる年金支給額の方が少ないことが明らかになっている。

 主婦も学生も「老後にもらえる年金が増えようと、掛け金は元本割れ。必要な収入が大幅に減収する」のを嫌って、今まで103万円、130万円の壁を乗り越えることができなかった。

 基礎控除を75万円分引き上げると、パートやアルバイトの日当が5000円なら、年間150日もの勤務日数が増える。実際には「130万円の壁」があるため、年間27万円、月額2万円程度の収入増にとどめるパート主婦が多いと見込まれる。

 それでも自民党と新聞・テレビは、税収7.6兆円が失われると猛反発。特にオールドメディア各社が、「自民党に右へならえ」の大反対を唱えている。

 人手不足で介護施設の倒産が最悪ペースだと書いておきながら、パート介護職の労働時間延長には反対する。手取り収入と労働時間が増えれば、学生の「新聞購読者数」が増えるかもしれないのだが…。

(那須優子)

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