日曜夜にフランスのAPF通信が配信したオピニオン記事には、面食らった人がいるのではないか。問題の記事のタイトルは「インド出身の亀田製菓会長『日本はさらなる移民受け入れを』」。ハッピーターンや柿ピー、ソフトサラダなど日本人のソウルフードである米菓のシェア30%を占める米菓メーカーの社長が、いつの間にかインド人に代わっていて、海外メディアでは日本が移民を受け入れる議論が始まっていた。レバノンに逃亡中のカルロス・ゴーンが、日産自動車社長に就任した以来のカルチャーショックだ。
亀田製菓の会長CEO(最高経営責任者)を務めるジュネジャ・レカ・ラジュ氏はインド出身で、日本に帰化している。1984年に来日後、食品や医薬品素材メーカーの太陽化学(三重県四日市市)で、お茶から抽出した「カテキン」の商品開発など技術者としての実績を引っ提げ、2014年にロート製薬副社長、2020年に亀田製菓代表取締役副社長を歴任。2022年6月から現職に就いている。
柿ピーのピーナッツが、カビが混入する中国産からインド産に代わったのは知っていた。ハッピーターンのハッピースパイスや、カレーせんのスパイスがより本格的になったのも「ジュネジャ効果」だったらしい。
ところが同氏のAPF通信インタビューは、スパイシーすぎた。日本が再度、高度経済成長を遂げるには、さらに多くの移民を受け入れる以外に「選択肢はない」と断言。アメリカではマイクロソフトやグーグルなどでインド出身者がCEOの任にあるのに対し、日本には外国生まれのCEOが非常に少ない、とも指摘した。
さらに日本で流通している米菓製品の一部が中国工場で作られていたことが判明し、SNS上では亀田製菓が炎上する事態に。中国工場は2003年に設立されているが、同社の主力ブランドは新潟県内の3工場で製造されている。それでもあまりの急展開と、コメという問題で「日本企業と日本が乗っ取られる」と危機感を抱く人がいたのだろう。
APF通信の記事の通り、少子高齢化の日本は2040年に労働人口が100万人不足する。それを外国人移民で補うのか、人口知能(AI)ロボット技術で補うのか。ジュネジャ氏が突きつけた「究極の選択」を、日本人が真剣に考える時期がきた。
(那須優子)