日本のサッカー関係者をヤキモキさせているインタビュー記事がある。12月13日にサッカーニュースのウェブサイト「GOAL」で配信された、チェイス・アンリのそれである。
ブンデスリーガのシュツットガルトに所属する20歳の若武者は、2年にわたるドイツでの生活やチームメイトとの関係を聞かれ、ざっくばらんに答えている。空気が変わったのは、インタビュー終盤で代表の話題になった時のこと。
インタビュアーが「日本代表なのかアメリカ代表なのかといった話が報道で出ています」と切り出し、現在の心境を尋ねる。するとチェイス・アンリは「代表は自然に任せる」として、日本代表入りを明言しなかったのだ。
アメリカ人の父親と日本人の母親の間で生まれ、幼少期はテキサス州で生活。これまで世代別の日本代表に選ばれて試合に出場しているが、A代表で公式戦の経験はない。
1試合でも日本のA代表として出場すれば他国の代表としての出場は不可能となるが、現時点で日本代表かアメリカ代表かを選択する権利は本人にある。
今季は開幕戦のSCフライブルク戦で途中出場し、リーグ戦でトップデビューを飾った。強豪クラブで激しいポジション争いが繰り広げられる中、センターバックとサイドバックを任され、第14節を終了した時点で11試合に出場(うち先発7試合)している。
「今季のシュツットガルトは、15年ぶりにチャンピオンズリーグに出場しています。そこで戦力として期待され、第4節のアタランタ戦(イタリア)で初先発。0-2で敗れたものの、世界を見渡しても、同世代でこの最高峰のレベルを体験できている選手は数えるほどしかいませんからね」(スポーツ紙記者)
であれば、どちらの国籍を選択するのか。日本とアメリカのサッカーファンが固唾を飲んで行方を見守っているのだ。サッカー関係者が言う。
「10月、11月に行われた北中米W杯のアジア最終予選で、チェイス・アンリを日本代表に招集する案が出ていたのですが、リーグ戦とチャンピオンズリーグの過密日程を考慮して見送ったと聞いています。すでに2026年の本大会の開催国のひとつであるアメリカ代表のマウリシオ・ポチェッティーノ監督は、複数の国籍を持つ選手に対し『必要とされる選手なら、いつでもドアは開いている』と、受け入れ態勢の万全ぶりをアピールしている。アメリカ代表にもっていかれる前に3月のアジア最終予選に呼ぶべきだと、日本のサッカー関係者やサポーターがヤキモキしているのが実情です」
アメリカ代表を選択すれば、日本代表にとって向こう10年以上の大きな損失になるとまで言われるチェイス・アンリの存在。この大型DFの決断はどうなるのか。
(風吹啓太)