「年収103万円の壁」引き上げをめぐる自民、公明、国民民主3党の交渉が12月16日に頓挫した。国民民主党の玉木雄一郎代表(役職停止中)は12月17日、Xでその内幕を明かしている。
〈この期に及んで「グリーンはどこですか?」と聞いてくる自民党宮沢洋一税調会長。178万円に決まっています。温厚な我が党の古川元久税調会長も席を立ったようです。3党の幹事長間で「178万円を目指す」と合意したのに、123万円では話になりません〉
3党の税制調査会長協議の席上で、自民党の宮沢洋一税調会長が、178万円で話を進める国民民主の古川元久税調会長に対し、国民の生活がかかった減税額をゴルフにたとえて、
「国民民主党案178万円のカップインは認めない。自民党案は123万円。これがグリーンに乗らないなら、お前らのグリーンに乗っかるのはいくらなんだ」
そんな主旨のナメきった発言をしたというのだ。
所得税控除額を103万円から178万円に引き上げる根拠になっているのは、控除額103万円となった1995年から、2024年までの賃金上昇率。この30年間、賃金も物価も上がり続けているのに、税控除額は据え置かれたまま。国民の生存権を守るために、生活に必要最低限の収入分には課税しないことが、所得税の原則となっている。
宮沢氏がそれを知らないはずはなく「123万円」というデタラメな自民党案を出してきたのだから、協議開始から10分で決裂したのも当然だろう。
さらに自民党の小野寺五典政調会長も、12月15日の北海道内の会合で、減税に猛反対。
「野党各党は壁をとっぱらえと言うが、根本がおかしいと思う。なぜ学生が103万円まで働かないといけないのか」
当然ながら、これは問題発言である。「103万円の壁」引き上げで生活が楽になるのは全ての納税者で、学生だけではない。防衛大臣経験のある小野寺氏は増税ボケでもしたのか、防衛大学校と防衛医大の学生にはそれぞれ月給13万1300円と年2回の期末手当(前年実績42万8105円)の。年俸約200万円が支払われていることを失念している。
しかも協議が決裂したのは、今年度の補正予算案が参議院予算委員会で採決され、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決した直後。野党の協力で補正予算が可決するや、宮沢氏が「178万円は飲めない」と言い出したのだから、この「裏切り行為」に野党は来年度予算案に反対どころか「内閣不信任決議案」を共同提出する可能性すら出てきた。
「内閣不信任決議」が最後に可決されたのは1993年。宮沢氏のおじ、宮沢喜一内閣が公約の政治改革をしなかったとして、自民党内部からも「嘘つき」呼ばわりされてのものだった。「宮沢一族の嘘つきDNA」に取り憑かれた石破総理は、はたして無事に年を越せるのか。
(那須優子)