今年もジャイアンツの宮崎キャンプには、長嶋茂雄終身名誉監督(79)が視察に訪れた。誰もが敬愛を示す、読売巨人軍の象徴とも言えるスーパースターの登場に、さぞチームは活気づいた、と思いきや、時代は変わってきたようで‥‥。
2月14、15日と連日にわたり、ミスターは精力的に練習を見て回った。ブルペンに姿を見せては、菅野智之(25)や西村健太朗(29)ら、投手陣にアドバイス。さらには、主砲・阿部慎之助(35)に対して35分間も熱血指導するなど元気な姿を見せ、紅白戦で4番に座り、バックスクリーン弾を放った大田泰示(24)には目を細めて「ひょっとしたら、おもしろいよ。今年は」と絶賛したものだった。
もはや「生きる伝説」と化したミスターに見守られ、選手たちもド緊張しながらも目いっぱい張り切ったかのように見えた‥‥。
ところが、様子をつぶさに見ていたスポーツライターはこう話す。
「それが‥‥、特に二軍の選手の傾向なんですが、2月3、4日に松井(秀喜氏=40=)が視察に来た時は『ワ~ッ!』と歓声が起こるような雰囲気だったにもかかわらず、ミスターの来訪には感動が薄いというか‥‥。要は、若い選手たちの中に、あのミスターについて、よく知らない世代が増えてきたんですよ」
なるほど、それならばしかたのない面もあるのだろう。記録にも記憶にも残る幾多の活躍をして球界に名を残してきたミスターといえど、04年に脳梗塞で倒れて以降は、表立ってグラウンドで活躍する姿を見せることがほとんどなくなった。仮に現在18歳のルーキーからすれば、ミスターが健康を害した当時ですらまだ7歳である。ミスターよりも松井秀喜を憧れのスターとして成長してきたというほうが、むしろ自然だ。
そんな中、ミスターは二軍にまで足を運び、黄金ルーキー・岡本和真(18)の打撃を見て絶賛。新人時代の松井氏よりもバッティングの柔らかさやテクニックの面で上回っていると評したのだ。打撃練習を終えた岡本も、ミスターのアドバイスに直立不動で耳を傾けたというが‥‥。
「ミスターと5分ほど会話をした岡本は、もちろん『すごくうれしかった』と恐縮していました。ですが、周囲からミスターについて知っているか聞かれると、『えっ、ミスター? 国民栄誉賞を獲った方で‥‥、監督もやられていた。偉大な人ですよね‥‥』とドギマギ。ベンチ裏でも『長嶋さんと言われましても‥‥』と、身を硬くしながら困惑の表情を浮かべていたそうです」(スポーツライター)
実は岡本、訓示を聞き終えるや、ミスターに対して「ありがとうございました」ではなく、「あざっした!」と声を出す一幕まであった。
「体育会系のノリで、まったく悪気はないのでしょうが、さすがに内田順三二軍打撃コーチ(67)からお叱りを受けていました」(球団関係者)
一方、岡本に限らず、ミスターに関して無知な若手が増えている現状には、球団も危機感を隠せないでいる。
「ミスターに対する敬意が薄れているのではと、球団関係者が右往左往していました。『長嶋さんの活躍をまとめたDVDを配布して勉強させたほうがいいのでは』という意見まで出た。というのも、巨人にはトラウマがあります。06年のキャンプに伝説のOB・金田正一氏(81)がキャンプを訪れた際、内海哲也(32)が『金村さん』と言ってしまったんですよ。まさか長嶋終身名誉監督の名前まで間違えることはないでしょうが‥‥」(巨人番記者)
とにかく、ミスターを喜ばせるよう、未来の巨人を支えることがヤングジャイアンツの使命である。