世界の累計発行部数が5億1000万部を超える人気漫画「ONE PIECE」のアニメ「エッグヘッド編」が2025年4月から放送再開される。アニメのストーリー進行が原作連載に追いついてしまい、現在、アニメ枠では過去の「魚人島編」全57話を21話にまとめ、映像効果や音響効果をリメイクした「SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』 魚人島編」を流している。放送再開に伴い、フジテレビの来春の番組改編が明らかになった。
日曜朝のフジテレビといえば、ヤクルト・スワローズの子供向け番組と、皇族の近況を伝える「皇室ご一家」に始まり、森尾由美、松居直美、磯野貴理子の「はやく起きた朝は…」と「ボクらの時代」、東映アニメーションが手がける「ゲゲゲの鬼太郎」や「ドラゴンボール」「逃走中」から「ONE PIECE」へと、家族でのんびりと視聴できる番組構成だった。だが「ONE PIECE」は「エッグヘッド編」再開を機に2025年4月から、アニメ「鬼滅の刃」が放送された23時15時枠に引っ越しするという。
「鬼滅の刃」のアニメ化が成功した一因は、あえて深夜放送枠にしてグロテスクなシーンの自主規制をしなかったから、と言われている。人間が蜘蛛に姿を変えられたり、鬼の首が飛ぶシーンは、原作に忠実にアニメ化された。TBSで放送されたアニメ「呪術廻戦」「ダンダダン」も深夜放送枠のおかげで、切なくも美しく恐ろしい怪異の世界観を存分に表現できた。
海賊王を目指すルフィの冒険譚である「ONE PIECE」に残酷な描写はないが、1997年から続く長期連載のクライマックスだ。「朝の番組だから」と自主規制がかかるくらいなら、深夜枠で原作を忠実に表現することには大賛成だ。
ところが問題は、2006年から20年間続いた「ONE PIECE」の後番組だ。まだ正式発表されていないが、来春以降の9時30分枠に、中国製のアニメーション番組が内定しているという。
日曜朝といえば、フジテレビが東映アニメーション、テレビ朝日が東映の特撮「戦隊もの」と「仮面ライダー」「プリキュア」、テレビ東京が「ポケモン関連番組」と長らくすみ分けされてきた。フィギュアを大人買いする大きなお友達からチビッコまで、我々は東映番組を見て育ったと言っても過言ではない。
そこに中国製アニメが「日曜朝のルーティン」に乱入するという大波紋。今年の出生数は70万人を切り、子供服や玩具の市場は縮小するばかり。子供番組を放送してもスポンサーが集まらない現実がある。
地上波で子供番組が次々にリストラされ、中国製の番組が…これは日本の近未来、受難を象徴しているのだろうか。
(那須優子)